優れたアプリ継続率の条件とは?
Adjust Team, Content & Insights, HQ, 2022年4月27日.
はじめに
モバイル業界のベンチマークについて語るうえで、アプリの継続率は注目すべき指標です。継続率を計測することで、ユーザーがアプリから離脱する理由とその経緯をより詳しく理解できるからです。継続率はアプリカテゴリーによって異なり、一部のカテゴリーでは他よりも継続率が高い傾向にあります。そのため、自社アプリのカテゴリーにとって「優れたユーザー継続率」とは何かを把握することが重要です。この指標から、ユーザーがアプリを離脱する理由を深く掘り下げ、アプリを使用し続けてもらうための方法を明らかにしましょう。
継続率とは
継続率とは、アプリをインストールした後の一定期間内に、何割のユーザーがアプリを使用し続けるかを示すパフォーマンス指標です。
継続率によって、マーケターはアプリパフォーマンスの経時的推移を理解できます。そのため、優れた継続率は、質の高いユーザー体験(UX)を表す重要な指標です。長期間にわたってアプリを自発的に使用するユーザーは、より高いエンゲージメントを発揮し、ひいては収益化につながる可能性が高くなります。モバイルマーケターにとって継続率のベンチマークが重要なのはこのためです。
アプリの平均継続率
継続率を分析する場合は、ユーザーの継続率が30日間でどう変化するかに注目します。30日間のある時点で継続率が急激に下がる場合、その日数よりも長い期間ユーザーを維持できるようアプリを最適化する必要があります。たとえば、ゲームアプリでオンボーディング期間(チュートリアルなど)の終わりに多くのユーザーが離脱していることに気付いたら、その部分を改善すべきだと分かります。
アプリの継続率において「1日」は「24時間」を指します。つまり、ユーザーがアプリを起動した時のタイムスタンプ2つを比較して、その間に24時間以上経過しているかどうかを判断できるのです。
優れた継続率の条件
Adjustは、2022年第1四半期の全カテゴリーにおけるアプリのパフォーマンスを平均化し、以下のデータを算出しました。データ範囲は広いものの、これで一般的なパフォーマンスの傾向を把握できます。自社アプリのパフォーマンスと以下の数値を比較してみましょう。
平均継続率
日 (30日間) | Android | iOS |
---|---|---|
1 | 25% | 28% |
7 | 11% | 13% |
21 | 7% | 8% |
30 | 6% | 7% |
興味深いことに、継続率は1週目の終わりまでにAndroidで14%、iOSで15%低下しています。さらに、2週目の終わりにはAndroidとiOSの両方で4〜5%下がり、30日目の継続率はおよそ6%に落ち着きます。
つまり、広義的に言うと、この数値よりも高いパーセンテージであれば「優れた継続率」と判断できるでしょう。アプリをインストールした翌日にユーザーの1/3がアプリを使い続けていれば、アプリのパフォーマンスは非常に高いと言えます。
さらにデータの範囲を広げると、ゲームカテゴリーのアプリでは、1日目にユーザーの28%が戻ってきており、7日目まで42%を保持しています。35〜60%という数字は1日目の継続率として高く、優れた数値です。
ここで重要なのは、AndroidユーザーとiOSユーザーの平均継続率はわずかしか違わないことです。自社の分析でAndroidとiOSが異なる結果を出すことがありますが、その場合、特定のデバイスにおけるアプリ機能に問題がある可能性があります。
1日あたり・カテゴリー別の継続率
平均継続率についての理解を深めるため、1日あたりおよびカテゴリー別の継続率について詳しく見ていきましょう。
1日目の継続率(平均:26%)
1日目の継続率が高い場合、アプリが長期にわたって優れたパフォーマンスを発揮していることがわかります。ただし、1日目の継続率は通常高く、2日目に大きく低下する傾向があることを覚えておきましょう。実際に、平均的なアプリはインストール後の3日間で1日あたりのアクティブユーザー数の77%を失うというデータがあります。
Adjustの調査によると、ソーシャルアプリは1日目の継続率が32%で、2日目も26%と引き続き高い継続率をキープしています。その他にも、1日目以降も継続率が高いカテゴリーには食事管理アプリやマッチングアプリなどがあります。しかし、2日目までに継続率が1/4以下まで低下するアプリは非常に少なく、2日目の継続率を1日目と比較する際は、これを念頭に置いておく必要があります。
7日目の継続率(平均:12%)
広告主は通常、インストール後の最初の週にリターゲティングキャンペーンを実施し始めます。リエンゲージメントによって、少なくともある一定のユーザーがアプリに戻って来るため、多くの場合はこの時点で指標が増加します。
ソーシャルアプリはAndroidで高いパフォーマンスを見せており、7日目でもユーザーの17%を保持しています。また、iOSの食事記録アプリは7日目で18%と、こちらも優れたユーザー継続率を達成しました。
21日目の継続率(平均:7%)
1日目から3週間経つと、ほとんどのアプリの継続率は1桁台まで低下します。平均でユーザーの10%以上を維持しているカテゴリーには、音楽アプリ、天気アプリ、仮想通貨アプリなどがあります。
30日目の継続率(平均:6%)
調査期間の最終日となる30日目は、21日目とあまり変わらない結果でした。このことから、3週間アプリを使用し続けたユーザーは、その後も長期的にアプリを使用するロイヤルユーザーになる可能性があることが分かります。
全カテゴリーにおける30日目の平均は6%でしたが、トラベルアプリや教育アプリなどの継続率は4%以下でした。
継続率上位カテゴリー
Adjustは10のカテゴリーにおける継続率を集計し、2021年の中央値と第2四半期のデータを比較したところ、上位3つのカテゴリーが明らかになりました。
- ソーシャル:AndroidとiOSの両方において、全カテゴリー中一貫して最高の継続率を記録し、1日目、7日目、30日目は交互にトップ2に入りました。
- ファイナンス&ビジネス:iOSでは7日目に2番目に高い継続率を達成し、30日目は1位になりました。このカテゴリーは、トップ3に2回ランクインしたわずか2つのカテゴリーの1つです。
- ゲーム:iOSの継続率を独占し、1日目と7日目は1位、30日目はトップ2を記録しました。
通常、ゲームはトラベルアプリなどに比べて継続率の変化が緩やかなカテゴリーです。これは、リエンゲージメントキャンペーンがクラスター化されておらず、複数のチャネルにまたがって日々継続的に実施されていることを表しています。
ベンチマークが分かったところで、次のセクションでは、アプリの継続率を最大限高めるための効果的なベストプラクティスを紹介します。
モバイルアプリの継続率を高める5つのベストプラクティス
上記のデータと比較し自社アプリのパフォーマンスが低い場合は、以下に紹介する継続率を高める方法を参考にしてください。オンボーディングからメッセージ表示の仕方まで、インストール後もユーザーにアプリを使い続けてもらうためのさまざまな方法を紹介します。
1.パーソナライズ化
位置情報からユーザー設定まで、さまざまな方法でそれぞれのユーザーに合った独自のエクスペリエンスを作り出し、アプリへの関心を維持し続けることができます。ユーザーをセグメント化することで、ユーザーを戦略的にグループ化して特定のカスタマージャーニーを追うことが可能になります。その結果、リターゲティングもさらに効果的になります。Adjustのオーディエンスビルダーでユーザーを簡単にセグメント化し、営業収益を増加させる方法について詳しくご覧ください。
2.リエンゲージメントを促すメッセージ
クリエイティブを最適化してさまざまなタイプのアプリユーザーにエンゲージすることで、継続率を即時に向上できます。プラットフォームのオーディエンスを、ユーザーストーリーの共有やランキング表の作成などに活用しましょう。
3.ユーザー体験のボトルネックを特定する
ほぼすべてのアプリ体験には、何らかの問題点があります。ユーザーがアプリから離脱するこれらのポイントを特定し、改善方法を見つけることで、継続率を向上させることができます。そのためには、継続率低下の要因となる問題を特定し、解決しなければなりません。多くのユーザーが同じところで離脱している場合は、データを分析して改善が必要な部分を明らかにしましょう。
4.ABテストでユーザーの好みを把握
ABテストは、新しい機能がユーザーに受け入れられるか、あるいは離脱の原因となるかを理解するための効果的な方法です。さまざまなセグメントで新機能をテストすることで、全ユーザーに公開する前に、同機能のどの側面/それに関するメッセージを改善する必要があるかが明らかになります。
5.より良いユーザー体験に向けてオンボーディングに力を入れる
ベンチマークレポートからもわかるように、ほとんどのユーザーは、インストール当日または翌日にアプリから離脱しています。そのため、ユーザーを維持する可能性を高められる最大のチャンスは、この期間中にアクションを起こすことで得られます。アプリの世界においても、第一印象が重要です。新規ユーザーがアプリで行う最初の行動が優れた体験(UX)につながるようにしましょう。ユーザーにアプリの使い方を紹介するだけでなく、アプリを使うことで得られるメリットを伝える直感的なメッセージや説明を取り入れると効果的です。
iOS 14.5以降の時代に継続率がこれまで以上に重要となる理由はこちらからご覧ください。また、アプリの継続率を高める方法についても併せてご覧ください。包括的なモバイルアナリティクスプラットフォームでさらに充実したマーケティングのインサイトをお求めの方は、Adjustにお問い合わせください。
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