マルチタッチアトリビューションとは?
Adjust, Content Team, Adjust, 2022年3月04日.
はじめに
マルチチャネルで展開するモバイルマーケティングからマーケターが必要な詳細データを得るための手法の1つとして、今までにないほどマルチタッチアトリビューションに注目が集まっています。
マーケターはタッチポイントの重要性をより意識するようになり、1つのコンバージョンに対するキャンペーンの効果を把握することを望んでいます。この記事では、マルチタッチアトリビューションの仕組みを紹介し、他のアトリビューションモデルと比較します。
パート 1
ファーストタッチアトリビューションモデルとラストタッチアトリビューションの比較
企業の多くは施策に一般的なアトリビューションモデルを複数利用しています。しかし、複雑なキャンペーンを実施する企業の中には、独自の計測システムを作りあげている場合もあります。最も一般的なモデルは、ファーストタッチアトリビューションとラストタッチアトリビューションです。マルチタッチアトリビューションモデルに対する理解を深めるために、まずこれらの2つのモデルを見ていきましょう。
ファーストタッチ(起点)アトリビューションでは、コンバージョンに至った最初のインプレッションに、すべてのコンバージョンへの貢献度が与えられます。
多くのアトリビューションプロバイダーは、一般的にラストタッチ(終点)アトリビューションをコンバージョンの計測法に採用しています。この場合、インストールに至った最後のキャンペーンまたはインプレッションが、コンバージョンに貢献したと見なされます。そのため、ユーザーがGoogleキャンペーン→Apple Search Ad、Facebook投稿という順番で複数の広告を見た場合、一番最後のFacebookがコンバージョンに100%貢献したと判断します。
パート 2
マルチタッチアトリビューションの定義 — どう違うのか?
マルチタッチアトリビューション (MTA)は、すべてのタッチポイントを考慮してインストールへの貢献度を計測します。例えば、ユーザーがGoogle検索、Facebook、Apple Search Adsなどの3つの異なるソースからの異なる広告を閲覧してからアプリをインストールした場合、これらのパブリッシャーすべてがインストールに貢献したものとして計測されるのです。
貢献度がどのようにアトリビュートされるかは、広告主が利用するアトリビューションモデルによって決まります。
パート 3
マルチタッチアトリビューションのメリット
マルチタッチアトリビューションは、ユーザーがコンバージョンに至った全体像と詳細データが得られるため、モバイルマーケティングの担当者は、アプリのインストールにつながった要因をより適切に判断することができます。
1度の接触がインストールにつながるのではなく、ユーザーが「ダウンロード」をクリックする前にたくさんの広告を閲覧していることは、多くの人が認識しています。したがって、ユーザーがどの広告を見てコンバージョンに貢献したかを把握することは、マーケティングの効果を上げるために重要です。
Wooga社のユーザー獲得(UA)マネージャーであるYury Bolotkin(ユリ・ボロトキン)氏は次のように語っています。「マーケティングの全体像がわかると、マーケティング戦略が改善でき、予算配分をより合理的に行うことができます。私は、ユーザーがコンバージョンポイントに至るまでの行動を理解する上で、マルチタッチアトリビューションモデルがとても重要な役割を担っていると考えています。」
パート 4
マルチタッチアトリビューションの課題
マルチタッチアトリビューションの核心は、それが広告のインプレッションかクリックかコンバージョンかを問わず、ユーザージャーニー全体にわたって貢献度を与えられる点です。このアトリビューションモデルは、他の広告のコンバージョン率を上昇させる広告キャンペーンの特定や、インストールに関わったすべてのタッチポイントに貢献度を与えることを目的としています。
理論的には、すでに別の広告を閲覧したユーザーのクリック率(CTR)はより高くなります。アプリストアのランディングページを開いてからダウンロードボタンをクリックするまでのコンバージョン率も、アプリページのコンテンツやユーザーの質の高さによるものである可能性があります。しかし、このアトリビューションモデルにはいくつかの問題があるため、マルチタッチアトリビューションの指標を得ることは難しいのが現状です。
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インストール数が過大評価されている
マルチタッチの1つ目の問題は、一連の広告がもたらすコンバージョンイベントの定義です。多くの場合、マルチタッチソリューションはコンバージョンの目標としてアプリのインストールに焦点を当てています。しかし、インストールしようというユーザーの意図(インテント)よりも、購入決定の判断により大きな重みを置くことが重要です。無料アプリのダウンロードのような「低いインテント」のコンバージョンが、アプリ内課金や購入と同じ「コンバージョン」として評価されるのは適切ではありません。
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広告配信のプロセスが見えにくい
マルチアトリビューションでは、以前「広告A」を見たことで、「広告B」をクリックする可能性が高まったユーザーコホートで「広告A」のアップリフト効果が期待されます。しかし、これには1つ問題があります。サードパーティのモバイルアトリビューション企業は、エンゲージメントのほんの一部分しか見ていない場合が多いのです。つまり、サンプルデータは不完全かつ歪んでおり、なりすましのエンゲージメントである恐れがあります。
ここで注目すべきなのは、クリック認証の導入により、マルチタッチ機能が大幅に改善された点です。クリック前のインプレッションを要求することで、同じデバイスでのエンゲージメントの一致を検証できます。これによって、正確なアトリビューションとアドフラウドによる予算の無駄を削減することができるのです。
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アシストインストールにより数値が誇張される可能性
マルチタッチアトリビューションの仕組みに対応するため、ユーザーのラストクリックまでのすべてのタッチポイントに貢献度が与えられるアシストインストール機能が誕生しました。アシストインストールによりアトリビューション数は大きく増加し、インストール単価(CPI)は低下します。1回のインストールで複数のアシストインストールを生み出すことができるため、ネットワークはこの指標を好みます。つまりアシストインストールの数値は誇張されている場合が多く、その結果、最も多いクリックを送信したネットワークが過剰評価されることにつながります。
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アドフラウドの横行
過去数日間に10回の偽クリックをし、過去5分間に1回の正当なクリックをしたユーザーがいるとします。1回の実際のクリックに100%の貢献度を割り振る代わりに、不正行為は膨大な量のアシストされたインストールを獲得します。マルチタッチアトリビューションでは、ほとんどの場合、エンゲージメントによってユーザーのコンバージョン率が増加するかを判断するためのモデルを利用していないため、アドフラウドが頻繁に発生する原因となっています。
Adjustは、クリックスパムをフィルターを利用して自発的に排除している数少ないアトリビューションプロバイダーの1つです。Adjustのディストリビューションモデルでは、ユーザーに影響を及ぼさなかったエンゲージメントは区別されます。
パート5
マルチタッチアトリビューションが廃れない理由
こうした多くの問題を抱えるマルチタッチアトリビューションに取り組む価値は本当にあるのでしょうか?Adjustは、そうであると考えています。マルチタッチアトリビューションは、正しく実施すれば、ユーザージャーニー全体にわたってより優れたインサイトを獲得できるからです。
そこでAdjustが2019年に導入したのがマルチタッチソリューションです。Adjustマルチタッチは、各媒体とキャンペーンの直接的な貢献度をよりきめ細かく表示し、どれがコンバージョンとアップリフトを生み出しているかを明らかにします。こうして得たインサイトを基に、予算の再配分やキャンペーンの最適化を行うことが可能になります。
パート6
マルチタッチアトリビューションの5つのモデル
さまざまなモデルの総称であるため、マルチタッチアトリビューションの仕組みは理解しづらい場合があります。さまざまなモデルが存在するのは、業界や課金の方法などによって、貢献度の重み付けを別々に行う必要があるからです。したがって、このアトリビューションモデルの貢献度の設定は均一ではありません。このため、企業のニーズに応じて貢献度を測定するさまざまなモデルが開発されてきました。
ここからは、最も一般的な5つのモデルに絞って見ていきます。
- 線形
- 減衰
- U型
- W型
- カスタム
線形モデル
線形モデルは、最もシンプルなマルチタッチアトリビューションの計測方法です。このモデルは、コンバージョン経路の各接点へその貢献度が平等に割り振られます。割り振りは均等に行われます。全体の値を購入に至る経路全体のタッチポイント数で割って計算された値です。
マーケターが線形モデルを選択する理由
単純な理由としては、タッチポイントの貢献度の重み付けが必要ない場合に、線形アトリビューションモデルが有効です。
しかし、一部のマーケターにとっては、このモデルは単純すぎると考えられています。例えば、線形マルチタッチアトリビューションでは、間違いなく他のインプレッションよりも多くの影響力を持つと考えられている最初と最後のタッチポイントの貢献度の相違は考慮されていません。
減衰モデル
このモデルは、コンバージョンから時間的により近くに発生したタッチポイントに対して、コンバージョンの貢献度が高く割り振られます。
マーケターが減衰モデルを選択する理由
コンバージョンにある程度の時間がかかる場合は、初期のタッチポイントはそれほど重要ではないかもしれません。見込み顧客がパイプラインに入った後、焦点はその見込み顧客の育成へと移り、コンバージョンに関連するインタラクションがより重要視されます。
このモデルのデメリットは、マーケティングサイクルの全体を包括的に見ることはできても、鍵となるタッチポイントにより多くの貢献度を割り振ることができないことです。減衰アトリビューションモデルの1つは、U型マルチタッチアトリビューションモデルです。
U型モデル
このU型モデルは、2つのマイルストーンを重要視しつつ、中間のタッチポイントも考慮します。このシナリオでは、最初のタッチポイントと最後のタッチポイントにそれぞれ40%の貢献度が割り振られます。残りの20%の貢献度は、中間点のタッチポイントに割り振られます。
このモデルにより、どのパートナーが認知を広めるのに貢献しているのか、そしてどのパートナーがより多くのインストール数をもたらしているのかを明確にできます。
マーケターがこのモデルを選択する理由
U型アトリビューションモデルは、入口と出口ポイントが最も貢献度が大きいと考えるマーケターに好まれるモデルです。
ただし、中間点のタッチポイントの貢献度が最初と最後のタッチポイントと同様に高いなら、それらに割り振られる貢献度の割合は小さくなります。W型アトリビューションモデルは、この問題に対応します。
W型モデル
W型マルチタッチアトリビューションモデルはU型モデルと似ていますが、さらに追加したタッチポイントも均一に貢献度を割り振り、残りは中間地点にあるタッチポイントに分散します。
最初と最後のタッチポイントと、リードを作ったことがわかっている中間地点のタッチポイントにそれぞれ30%の貢献度を割り当て、残りの10%を残りの中間地点のタッチポイントに分散させます。
マーケターがこのモデルを選択する理由
カスタマーライフサイクルが長く、かつ追加したマーケティングチャネルが全体に大きな影響を与えている場合、そのタッチポイントに重点を置いて、残りの貢献度は均等に割り振るのが有効だと考えられます。貢献度を変更することもできます。例えば、ファーストタッチポイントとラストタッチポイントの貢献度を25%と35%に重み付けすることができます。
ただし、モデルを構築する場合は注意が必要です。複雑になればなるほど、エラーが発生しやすくなるためです。
カスタムモデル
すでに広範囲なタッチポイント計測を実施している企業の場合、アトリビューションモデルの重み付けを、個々のレポートのニーズに合わせて調整することもできます。
このため、一部の広告主は、下記のように各タッチポイントにさまざまな貢献度を設定できるカスタムモデルを選択します。
マーケターがカスタムモデルを利用する理由
全く同じ企業は存在しません。ビジネスモデルや業界、マネタイズ戦略はさまざまなので、多くの場合、独自のアトリビューションモデルを作成することで恩恵が得られます。
繰り返しになりますが、モデルの複雑さが増すと、エラーの確率も高まります。さらにこのようなモデルは、新しいデータを入手する度に、広範囲にわたる最適化が必要となります。要するに、カスタムのアトリビューションモデルを作りあげるには、ほとんどのアプリ企業では確保できない膨大な作業時間と資金が必要になります。
適切なディストリビューションモデルを選択するには、企業のニーズをしっかり検討し、対応できる人材やリソースとの間に適切なバランスが必要となります。これは次のセクションで取り扱います。
パート7
効果的なB2Bマルチタッチアトリビューションのための6つのヒント
マルチタッチアトリビューション分析を始める場合、データに関する問題やプロジェクトの管理体制など、検討しておきたいポイントがいくつかあります。下記の簡単なチェックリストでベストプラクティスをご確認ください。
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考え方を変える
マルチタッチアトリビューションは、従来のパフォーマンスデータと非常に異なるため、それに対する心構えが求められます。
お互いの結果を独立してレビューした場合は特に、あるチャネルが別のチャネルに及ぼす影響が過小評価されることもしばしばあるため、データの解析方法を改定する必要があります。
したがって、チャネルを切り離して考えてはいけないことを、マーケティングに携わる担当者全員が理解することがとても重要です。そのためには、マルチタッチについて周知する必要があります。
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重要な関係者へマルチタッチの認識を深めてもらう
導入を確実に成功させるための最初のステップは、関係者全員がマルチタッチアトリビューションについての正しい情報を得て、企業にとってそれがどんな意味を持つか、そしてどんな効果が得られるかを確実に理解することです。
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新しい共通のKPIを作成する
成功させる上で重要なことは、いくつかのKPIを作成して目標を明確にすることです。マルチタッチは非常に範囲が広く媒体などの関係者の目標と関連する場合が高いため、共通のKPIについて同意を得る必要があります。これによりマーケティングパフォーマンスを統合的に検討することができます。
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データの取り扱い方法を計画する
データは複数のキャンペーンやタッチポイントに及ぶことになるため、設定においてもさまざまな追加事項があります。
データの種類、流入元、収集方法、形式などを一覧にした青写真を作成すると、作業内容の分類や初期によくあるエラーの緩和に役立ちます。
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小さく始める
最初からマルチタッチに頼るべきではなく、段階的にキャンペーンやテストを実施して、適切に導入がされてあるかを確認します。まずは小規模なキャンペーンで繰り返しテストして確認します。
すべての作業が完了したら、マルチタッチアトリビューションに懐疑的なチームメンバーを説得するのに最適な社内ケーススダディを実施しましょう。
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最適化する
マルチタッチの本質は、連携してパフォーマンスを推進する多くのタッチポイントを理解することです。つまり、各タッチポイントを微調整して改善し、コンバージョンのファネルを微細なレベルで改善する余地は、数多く存在します。
広告サイズからコピー内容、クリエイティブまで、キャンペーンを構成する各要素について、その有効性を細かく改善していく方法を検討することが大切です。おそらくこれまでほとんど必要なかったレベルで、きめ細かくキャンペーンを調べていくことになります。しかし、小さな微調整が大きな効果をもたらすこともあります。
パート8
Adjustマルチタッチの仕組み
Adjustマルチタッチにより計測されたユーザーの各タッチポイントは、お客様のBIシステムやS3バケットにリアルタイムで送信されます。それらのエンゲージメントを自社のアトリビューションモデルにマッピングすることにより、キャンペーン全体を通して顧客行動や各タッチポイントにおける広告効果を可視化することができます。
Adjustの共同創業者であるポールH.ミュラーはこのように語っています。「マルチタッチアトリビューションのご要望が高まっています。コンバージョンに貢献したすべてのタッチポイントが確認できるAdjustマルチタッチは、現代のモバイルユーザーの広告との関わり方を反映するデータを提供します。マーケティング担当者はこの情報を利用することにより、ユーザーがコンバージョンに至ったチャネルやキャンペーンを正しく評価し、成果があった広告に投資することができます。カスタマージャーニーのどこで価値が生み出されたかを正確に特定したい、データドリブンなビジネスを展開するマーケターには必要不可欠な機能です。」
これらを念頭において、Adjustマルチタッチがもたらす、さまざまなメリットを見ていきましょう。
Adjustマルチタッチでできること
マーケターはマルチタッチのデータを使って、媒体やキャンペーンごとに効果を計測します。コンバージョンへと誘導したすべての計測されたエンゲージメントを確認することで、以下のことが可能になります。
- ユーザーが広告とどのようにやり取りを行ったかを確認する。
- カスタマージャーニー全体を通じて、どの工程が価値を生み出したのかを特定する。
- 施策の効果性(アップリフト)に最も貢献したキャンペーンを計測する。
- マーケティングファネルの最初から最後まで、完全なマーケティング統計情報を得る。
- コンバージョンに貢献した媒体のトレンドと相関関係を特定する。
- フィルターがかかっていないローデータを受信する。
また、Adjustマルチタッチでは、報告されるタッチの数に制限はありません。インストール、セッション、イベント、またはリアトリビューションに貢献するクリックまたはインプレッションが、アトリビューション期間外に発生した場合でもすべて報告されます。さらに、API連携パートナーがキャンペーンパフォーマンスの表示に必要であると主張するタッチポイントも提供します。
ネットワークそれぞれの価値を把握
Adjustマルチタッチでは、すべてのエンゲージメントをマッピングし、コンバージョンに至るまでの過程を効果的に観察できます。これにより、これまで見逃していた動向について把握できるようになります。
例えば、2つの媒体の重要な相関関係について発見があるかもしれません。例えば、ユーザーが媒体Bが配信する一連のバナーの閲覧後に、媒体Aの広告をクリックしてアプリをインストールする傾向が高い場合、媒体Bは、媒体Aに対してリフト効果がある(施策の効果性が高い)ことがわかります。このことから、媒体Bが最後のクリックを発生させていなくても、媒体Aとの間に重要な相関関係があることがわかります。そのため、コンバージョンに大きな貢献をしている媒体Bに対して広告予算を配分することができます。
Adjustマルチタッチは、このような方法によってプロモーションやアウェアネスに貢献するパートナーに対して評価を行い、チャネルや媒体、キャンペーン間で最善のパフォーマンスを発揮する相関関係を特定していくことができるのです。またこれらのインサイトを活用して、効率の悪いタッチポイントを除外し、ユーザージャーニーに合わせてキャンペーンの最適化を図ることができます。
マーケティング戦略へのマルチタッチアトリビューションの導入について詳しくは、Adjustマルチタッチガイドをダウンロードしてください。
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