ブログ SKAdNetwork 4.0の新しいポストバックを活用するための戦略

SKAdNetwork 4.0の新しいポストバックを活用するための戦略

iOS 16.1とともに10月にリリースされたAppleのSKAdNetwork 4.0(SKAN 4)には、モバイルアプリマーケターにとって役立つ機能が多数備わっています。iOSデバイスでより多くのデータを取得し、キャンペーンパフォーマンスに関する理解を深める機会が増えることから、業界からは今回のアップデートに期待が寄せられている一方で、新機能によって複雑さが増す側面もあります。また、AdjustはSKAN 4に対応したSDKをリリースし、「SKAN 4における4つのマイルストーン」と称して、新機能に完全対応するための4つの重要なステップを提案しました。これらのステップは、今後数ヶ月にわたって進む業界全体でのSKAN 4導入に向けて、戦略的な対策を立てるのに役立ちます。

この記事では、3つになったSKAN 4のポストバックについて、変更点とその仕組み、さらに新しいシステムを最大限活用する方法を説明します。今回のアップデート内容を把握して、2023年のiOSキャンペーンでより優れたユーザー体験を提供し、持続的なアプリ成長を促進しましょう。

SKAN 4の3つのポストバック:受け取る内容とタイミング

これまでSKAN 3では、開発者はインストール後24時間の情報を含むポストバックを1つ受け取るのみでした。SKAN 4では、ポストバックの仕組みがより柔軟に変更されました。1つのポストバック期間で、conversion valueの更新がトリガーされるたびに24時間タイマーが延長される以前の仕様に代わり、3つの計測期間と3つのポストバック(複数のコンバーション)が利用可能になります。ポストバックの計測期間は、1つ目が24時間から0~2日目、2つ目が3~7日目、3つ目が8~35日目に設定されます。この変更により、データや情報を抽出するための時間はだいぶ増えたものの、その仕組みは一見したところよりも若干複雑です。また、ポストバックタイマー(開発者がポストバックを受け取るまでの期間)も延長されました。SKAN 4以前は最長24時間でしたが、現在は1つ目のポストバックのタイマーは最長48時間、2回目と3回目のポストバックは最長144時間(6日間)となっています。

Appleは、ポストバック期間を任意の時点で固定(ロック)し計測するlockWindow(ポストバック期間が終了する前にポストバックを送信するかどうかを示すboolean値)も導入しました。固定すると残りの期間が終了し、固定した時点までの最新のconversion valueを含むポストバックが送信され、ポストバックのリターン/アトリビューションタイマーが開始します。つまり、計測対象のすべてのイベントが5日目までに発生した場合、7日目まで待ってポストバックタイマーを開始しても意味がないということです。その代わり、5日目にロックをかけ、24時間〜144時間のランダムなタイマーを設定することで、2日間余計に待つ必要がなくなります。ロックをかける際には、計測ギャップ(measurement gap) と呼ばれるものを念頭に置いておくことが重要です。例えば、ポストバック1の10時間後にロックをかけると、ポストバック2の期間が始まるまで残り62時間待たなければならず、結果として62時間分のSKAN情報が失われてしまいます。Adjustは、Datascapeの「1時間ごとのイベントレポート機能」でこれを解決することを目指しています。

Appleが示す以下の例では、ポストバック2で5日目あたりに開発者がlockWindowを適用したことがわかります。各期間でロックをかけることができるほか、それぞれ異なるロックを適用できます。

では、それぞれのポストバックについて見ていきましょう。

  1. ポストバック1: 1つ目のポストバックの期間は24時間から1〜2日に延長されました。Appleは、SKAN 4で「粒度が細かい値」と「粒度が粗い値」のconversion valueを導入しました。粒度が細かい値(SKAN 3までのconversion valueと同じ)は、ポストバック1でしか受け取ることができません。キャンペーンがプライバシーのしきい値に達している場合は粒度が細かい値を受け取ることができ、達していない場合でも、粒度の粗い値を受け取ることができる場合があります。取得できるインサイトは少なくなりますが、何の情報も持たないnullの値よりも価値のあるデータが得られます。
    長所: 計測期間が長いため、粒度が粗いconversion valueを受け取れる可能性が高く、nullの値の割合が減少します。
    短所: 計測期間が長い(最長48時間)と、データの取得にもより時間がかかります。
    注: 新しく登場したクラウドの匿名性階層(crowd anonymity tiers)では、規模の小さいキャンペーンでも粒度が粗い値を受け取れる可能性がありますが、階層0にしか達しなかった場合、2桁のソースIDのみを含むポストバック1しか受け取れません。階層3になると、4桁のソースIDが受け取れる仕組みになっています。詳細は以下の画像をご覧ください。
  2. ポストバック2とポストバック3: 2つ目と3つ目のポストバックでは、3日目〜7日目と8日目〜35日目のアプリ内アクティビティを計測できます。1週目以降に重要なイベントが発生するアプリにとっては、非常に役立つアップデートだと言えるでしょう。しかし、注意するべき点がいくつかあります。ポストバック2とポストバック3では、粒度が細かいconversion valueを受け取ることができません。つまり、粒度が細かいconversion valueは0〜63の値にマッピングすることができ、粒度が粗い値は低・中・高のいずれかの値に付与することができます。
    長所: 35日目までの情報、データ、インサイトが得られ、(潜在的に)規模の小さいキャンペーンにも対応できます。
    短所: 粒度が粗いconversion valueしか受け取れないのに加え、クラウドの匿名性の階層0では何のデータも受け取れず、ポストバックを同じデバイスに一意に結び付けることもできません。しかし、ソースIDには集計データレベルで結び付けられるため、集計コホートデータを得ることができます。Adjustは、ユーザーを3つのレベル(低・中・高)に分類し、ユーザージャーニーで予測される特定のイベントや収益範囲に注目することで、粒度が粗い値をマッピングすることをおすすめします。

以下の表は、計測期間、ポストバック、クラウドの匿名性階層が互いにどう機能するかを示したものです。

業界全体での導入に向けた戦略

SKAN 4の機能がその真価を発揮するには、業界全体で今回のアップデートが導入され、すべての業界関係者が技術的に対応できる状態にならなければなりません。つまり、アプリ開発者、媒体、パブリッシャー、エンドユーザー、そしてAdjustを始めとするモバイル計測パートナー(MMP)がそれぞれSKAN 4に対応した戦略を立てる必要があるのです。こうしたSKAN4対応戦略の構築は、モバイルアドエコシステムの多くの段階でリソースを要する作業となるため、業界全体への導入が進むにはある程度の時間がかかると思われます。また、クラウドの匿名性やAppleのプライバシーのしきい値の条件を満たすにはどのくらいの規模のキャンペーンが必要か、SKAN 3とSKAN 4を同時に使用するとどうなるかなど、依然として未知数な部分も少なくありません。

MMPの視点から見ると、AdjustはすでにSKAN 4に対応しており、ソリューションはすぐに利用可能です。オープンソースのSKAN 4対応SDK(SDKバージョン4.33.0)は、AdjustのGithubリポジトリからアクセスいただけます。このバージョンは、粒度が粗いconversion valueとlockWindowといったSKAN 4の機能に対応しています。SDKの実装方法やSKAN 4の対策、2023年に向けた戦略については、Adjustの担当者にお問い合わせいただくか、Adjustブログの最新iOSリソースページをご覧ください。

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