SKAdNetwork 4.0を解説:知っておくべきポイント
Katie Madding, CPO, Adjust, 2022年11月11日.
6月の世界開発者会議(WWDC)でAppleが発表したとおり、iOS 16.1とiPadOS 16.1向けのSKAdNetwork 4.0が2022年10月24日に正式リリースされました。SKAdNetwork 4.0では、広告媒体や広告開発者向けの新機能やオプションが多数追加されています。これらのアップデートはマーケターにとって大きなチャンスとなる一方で、以前のアップデート時と同様に、新たな複雑さをもたらします。
iOSのマーケティングを成功させるには、SKAdNetworkとユーザー獲得戦略をマスターすることが重要です。そこでAdjustは、複数のポストバックに対応してconversion valueロジックを任意の粒度でカスタマイズする機能と、階層型ソース識別子を計測するためのソリューションを構築しました。Adjustの「Conversion Hub」と「Datascape」を活用すれば、SKAdNetwork 4.0でのマーケティングを成功に導くことができます。
では、今回のリリースの変更点とそれによって期待できること、さらにマーケターへの影響について見ていきましょう。
SKAdNetwork 4.0がiOS戦略に与える影響
念頭に置いておきたいのは、アップデートの内容が業界全体に浸透するまで時間がかかることです。そのため、まずは新機能をどのように活用するかという点を中心に戦略を立てることをおすすめします(詳細は以下で解説します)。
1. Conversion valueの粒度を調整することでより多くのインサイトを取得
イベントや収益に対する従来のconversion valueマッピングに加え、「低・中・高」と値の粒度が3段階に異なるconversion valueを設定するオプションが追加されました。
新たにできるようになること
- 従来の粒度が細かい(fine grain)conversion valueマッピング(Adjustが提供する6ビットまたは63のCVモード)に加えて、粒度が粗い(coarse grain)conversion valueをマッピングできるようになります。
- Conversion valueの値の粒度は、「低・中・高」のレベルに設定できます。
- プライバシーのしきい値の条件が満たされているかどうかに応じて、3つの全レベルの値をポストバックで取得できます。
マーケターへの影響
- 粒度の異なるconversion valueを製品分析にどう活かせるかを今から考えておきましょう。Adjustはこれらの値を、ユーザーの質を把握するための新たな機会と捉えています。何の情報も得られない「null」とは違い、3つの値を受け取ることができるからです。一部のプライバシー階層ではどの粒度の値も受け取ることができませんが、このオプションを設定することで、より多くのユーザーとその価値について深く理解する機会が得られます。Adjustでは、粒度が粗いconversion valueを使用して、アプリのLTVを向上させる指標と密に結び付いている特定のイベント、収益または継続率を計測することをおすすめします。
- 従来取得できていたレベルの粒度の値の数が増減する場合があるため、粒度が細かいconversion valueは特定のアクティビティにそれぞれ関連付けて活用することを推奨します。
2. 時間枠と新しいポストバック期間
Appleの新機能「複数のコンバーション」の一環である新しいポストバック期間(2つ目のポストバックと3つ目のポストバック)は、広告主や開発者が、特定のキャンペーンでアプリをインストールした人がそのアプリを長期間にわたって使用する頻度をより深く理解できるようにすることを目的としています。つまり、これまでは24時間のポストバック期間だけだったのが、3つのポストバック期間で最大35日間まで計測できるようになりました。
- 3つのポストバック(0〜2日、3〜7日、8〜35日)を使用でき、いずれもlockWindow(ポストバック期間が終了する前にポストバックを送信するかどうかを示すboolean値)で期間を短縮またはカスタマイズできます。
- ポストバック送信時の遅延は24~144時間(1つ目のポストバックの場合は24~48時間)です。
- 最初のポストバックでは、粒度が細かい値か粗い値のどちらかのconversion valueを受け取れます。
- 2つ目と3つ目のポストバックでは、24〜144時間の間に送信される粒度が粗いconversion valueのみを受け取ることができます。
マーケターへの影響
- Conversion valueがnullで返されるのを防止できます。粒度を分けてconversion valueを設定することで、(コンバージョンが低いキャンペーンでも)より多くの情報をポストバックで受け取れる可能性が高くなります。2つ目と3つ目のポストバックは結び付いていないため、特定のイベントや継続率に着目して粒度が粗い値を利用することをおすすめします。
3. conversion valueを固定させ、lockWindowでポストバックを発生させる
全期間を通してconversion valueを継続的に更新をするのではなく、ポストバック期間の任意の時点で「固定して計測」することができるようになりました。たとえば、1つ目のポストバックでは、最初の48時間以内のどの時点でもlockWindowを適用できます。
Appleが示す以下の例では、最初の48時間の終わりにコンバーションが計測され、ポストバックが送信されていることがわかります。その後、およそ5日目に開発者はコンバーションをロックしています。その後、3~7日の残りの期間が終了し、ロックをかけた時点までの最新のconversion valueを含むポストバックを受け取ることになります。
マーケターへの影響
- 固定して計測すると、ポストバック期間内のその時点でランダムなタイマーがスタートし、ポストバックの待ち時間が減ります。
- Conversion valueからより迅速にインサイトを得られます。
- ユーザージャーニー内の主要なイベントに関連したタイミングでロック期間を適用することで、LTVの計測方法を標準化できます。
4. プライバシーのしきい値、アドネットワークの粒度向上、Webからアプリへのアトリビューション
プライバシーのしきい値について知っておくべきこと: これまでは、ユーザーがプライバシーのしきい値の条件を満たしていない場合、nullのポストバックを受け取るようになっていました。SKAdNetwork 4.0は、プライバシーのしきい値をAppleが各インストールを割り当てるクラウドの匿名性(SKAdNetworkがアトリビューションデータを送る時のプライバシー保護方法) を4階層(0、1、2、3)にまで拡張します。インストールが割り当てられる階層に基づいて、完全なポストバックで利用可能なフィールドの1つまたは複数が削除される場合があります(粒度が細かいconversion value、粒度が粗いconversion value、ソースID、Source App ID)。
Appleが導入する新しい階層は次のように可視化でき、「階層3」は完全なペイロードを表しています。
マーケターへの影響: すべてが理想的に進んだ場合、SKAdNetwork 4.0は最初のポストバックで粒度が細かいconversion valueと大量のデータが含まれる完全なペイロードを返します。また、nullのポストバックも減少するため、より多くのデータをもとにキャンペーンを最適化することができます。
ソース識別子とアドネットワークの粒度向上について知っておくべきこと: SKAdNetworkは、最大4桁(これまでは2桁)のキャンペーンID(新たに「ソース識別子」に名称変更)を提供することができ、アドネットワークのディメンションレポートでは0~99桁から最大10,000桁へと拡張されます。
すべてのポストバックデータと同様に、受信するデータの粒度はAppleによるプライバシーのしきい値の条件によって決まります。条件を満たしている場合、媒体は4桁すべてを受け取ります。そうでない場合は3桁、最低2桁になります。
マーケターへの影響: 最初の2桁は必ず受け取ることになるため、これまで通り優先順位を付けて、3、4桁目はより粒度が細かいディメンションに活用できます。たとえば、Appleが以下に可視化したように、位置情報(location)と配置(placement)を表す識別子に3桁目と4桁目を追加することが可能です。
Webからアプリへのアトリビューションについて知っておくべきこと: SKAdNetwork 4.0のWebからアプリへのアトリビューションは、予想されていたとおりSafariでしか利用できませんが、iOSユーザーの90%以上がモバイルブラウザにSafariを使用していることから、網羅率は高いと言えます。
マーケターへの影響: App Storeの製品ページに誘導するWeb広告のアトリビューションができるようになりました。つまり、アプリとWebを横断するインベントリがある場合、クロスチャネルアトリビューションを効果的に行うことができます。特定のアプリカテゴリーや、Webが主な市場や業界においては、極めて重要な意味を持つでしょう。
AdjustでiOSのマーケティングを成長に導く
アプリ開発者から広告媒体、ユーザーまで、SKAdNetwork 4.0はまたもやiOSの計測にめまぐるしい変化をもたらし、業界全体に大きな機会が訪れています。iOSでのアプリ成長をサポートするConversion Hubをはじめとする次世代ソリューションの開発を続けるAdjustにとって、時代を先取りするために事前に計画を立て、戦略を実行する準備を整えるには今が絶好のタイミングだと言えます。Adjustは今後も積極的に技術の開発に取り組み、SKAdNetworkとiOSのマーケティングを成功に導くソリューションをクライアントにお届けしていきます。また、今後数週間にわたってSKAdNetworkの変更点やアップデートについて詳しく解説していきますので、ぜひ最新のブログ記事にご注目ください。
詳細についてはAdjustの担当者、もしくはiOSリソースセンターのページよりお問合せください。
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