プログラマティック広告ガイド:マーケターが知っておくべきすべての知識
Adjust Team, Content & Insights, HQ, 2022年8月31日.
プログラマティック広告はマーケターが広告インベントリを売買する方法を劇的に変化させ、今ではデジタルマーケティング戦略において欠かせないものとなりました。米国の市場調査会社eMarketerによると、プログラマティック広告の費用は2023年までに1,400億ドルを突破すると見込まれています。このガイドでは、プログラマティック広告のディスプレイキャンペーンの仕組み、それによってできること、さらにプログラマティック広告のメディアバイイングについて理解するために必要な用語を解説します。
プログラマティックディスプレイ広告とは
プログラマティックディスプレイ広告とは、アドエクスチェンジを介した広告インベントリの売買を自動化するプロセスです。AI技術と機械学習を用いたこの手法は、広告主をパブリッシャーにつなげ、広告主とパブリッシャーによって設定された要件に基づいて、機械が自動的に広告枠を売買します。
デジタルディスプレイ広告市場におけるプログラマティック広告の普及
eMarketerによると、米国におけるプログラマティック デジタル ディスプレイ広告の費用は2022年に1,152億3,000万ドルに達し、デジタルディスプレイ広告市場の90.2%を占めると予測されています。
2021年、モバイルディスプレイ広告費用の成長率は、プログラマティック広告全体の平均を下回りました。これは、広告主がコネクテッドTV(CTV)などの他分野への投資を増やしていることが原因です。しかし、エンターテイメント、CPG(消費者向けパッケージ商品)、金融サービス、通信、家電の5つの業界では、デジタル広告予算の70%以上がモバイルに割り当てられるようになると言われており、モバイル広告費用の割合が依然として大きいことを示しています。
プログラマティック広告の仕組み:知っておきたい用語
マーケターなら、プログラマティック広告の仕組みを定義する基本用語を把握しておきたいものです。以下に、プログラマティック広告を活用したマーケティングに欠かせない用語の定義をまとめました。
サプライサイドプラットフォーム(SSP)
サプライサイドプラットフォーム(SSP)は、デジタルパブリッシャーがディスプレイ、モバイル、動画広告のインプレッションをリアルタイムに販売するためのソフトウェアです。広告枠の提供は全自動で行われるため、パブリッシャーはインベントリをきめ細かく管理できます。
デマンドサイドプラットフォーム(DSP)
SPPとは対照的に、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)は、広告主がモバイル、ディスプレイ、動画広告インベントリをアドエクスチェンジ経由で自動的に購入するためのソフトウェアです。DSPにより、広告主は多くのリアルタイム入札(RTB)ネットワークを横断して質の高いトラフィックを購入できるため、ビジネス拡大のための強力なデジタル マーケティング ツールとなります。DSP広告では、予算をより効果的に活用することで費用を抑えられます。デマンドサイドプラットフォームをご検討の場合は、適切なモバイルDSPを選択する方法について解説したブログ記事(英語のみ)をご覧ください。
アドエクスチェンジ
アドエクスチェンジとは、広告主、パブリッシャー、代理店、DPS、SSPが入札を通して広告インベントリを売買するオンラインマーケットプレイスです。アドエクスチェンジにはパブリッシャーのSSPから広告インベントリが提供され、その後広告主のDSPにより広告購入が管理されます。パブリッシャーには、SSPでアドエクスチェンジに接続し、大規模な広告主のプールにリーチできるという利点があります。 ****
プログラマティック広告のメディアバイイングのタイプ
リアルタイム入札(RTB)
リアルタイム入札(RTB)はオープンオークションとも呼ばれ、すべての広告主とパブリッシャーが参加できるオークションで広告インベントリの価格がリアルタイムで決定されます。リアルタイム入札(RTB)では、最も高い入札価格を提示した広告主が広告枠を購入できます。簡単に言うと、ライブオークションに似ていますが、アドエクスチェンジ内でパブリッシャーと広告主の双方が自動化されたシステムを利用できる点が異なります。
リアルタイム入札(RTB)オークションの仕組み
デジタルパブリッシャーは、SSPを使用して、アドエクスチェンジでディスプレイ、モバイル、動画広告のインプレッションをリアルタイムかつ自動的に広告主に販売します。反対に、広告主はDSPを使用して複数のパブリッシャーのWebサイトを横断して広告インプレッションを自動的に購入します。その結果、複数の広告主がインプレッションに入札することができ、落札者(入札価格が最も高額だった広告主)の広告がユーザーに配信されます。これら一連の動作はすべて瞬時に行われます。
たとえば、プレイヤーが「レベルアップ」する度に広告が表示されるゲームアプリがあるとしましょう。レベルアップした瞬間、モバイルSSPはオークションを実施します。広告主がDSP広告を使用して入札を行うと、最大入札額を提示した広告主が即時に選ばれ、ゲームアプリのプレイヤーに対してその広告が表示されます。
リアルタイム入札は、広告主とパブリッシャーの双方にメリットをもたらします。広告主はターゲットを十分に絞り込む仕組みにより、関連性の高いインベントリに集中することで、優れたROIを達成できます(ユーザーにとって関連性の高い広告が配信されるため)。また、より多くの入札者に対して広告枠を開示することで、パブリッシャーの収益を拡大させることも可能です。さらにパブリッシャーは、最大入札額の広告主のデータから入札者がどのくらいの額を入札する気があるかを把握し、それに応じてプレミアムな広告枠の価格を設定できます。リアルタイム入札がプログラマティック広告で最も人気がある理由はここにあると言えます。
プリファードディール(PD/単価固定の優先取引)
「プリファードディール」とは、1対1のプログラマティックオークションで、パブリッシャーは厳選された広告主にプレミアムインベントリを固定されたインプレッション単価(CPM)で販売します。広告主は、固定されたインプレッション単価またはそれ以上の価格でリアルタイムに入札します。しかし、このタイプのプログラマティックバイイングでは、広告主が一度インプレッションに入札すると、そのプリファードディール内の同じインプレッションに再度入札することはできません。
こうしてパブリッシャーと広告主が直接関わることにより、全当事者に透明性がもたらされます。パブリッシャーは広告キャンペーンの実施前に広告インベントリを確認できるため、品質のコントロールが可能である一方で、広告主は広告単価を自ら決定できます。
プライベートマーケットプレイス(PMP)
プライベートマーケットプレイス(PMP)はその名のとおり、入札者制限のあるオークションです。通常、招待された特定の広告主だけがPMPに参加できますが、広告主がプライベートマーケットプレイスへの参加を申し込む場合には、パブリッシャーが事前審査を行います。
オープンマーケットプレイスで入札可能になる前にプレミアムなインベントリを獲得したい広告主には、PMPが適しています。また、このマーケットプレイスは、広告主とパブリッシャーとの関係性がRTBに比べてはるかに密接な点も特徴です。
プログラマティックダイレクト
プログラマティックダイレクトでは、パブリッシャーにより招待された広告主が、入札せずに広告インベントリを直接購入できます。つまり、広告インベントリは設定された期間中、交渉により同意された価格(通常はインプレッション単価(CPM))で広告主に販売されます。
このタイプのプログラマティック広告では、広告主は広告がどこに配置されるかを把握しており、広告インベントリ、価格、広告表示回数の上限、オーディエンスターゲティングを設定できるため、保証型自動取引(オートメイテッド ギャランティード)とも呼ばれます。プログラマティック ダイレクト メディアバイイングの独占性と特異性により、プログラマティックダイレクトはプレミアム広告の配置やブランドイメージの保護に重きを置いている企業にとって特に効果的です。しかし、プログラマティックダイレクトの使用には、多額の予算が必要となることに広告主は留意すべきでしょう。
プログラマティック広告のメリット
従来のメディアバイイングには、提案依頼書(RFP)の送信、パブリッシャーあるいは広告主との交渉、広告掲載の申し込み(IO)など、多くの単調な手作業が必要とされ、そのプロセスは今日に比べると時間のかかる、非効率的なものでした。
それに対して効率的なプログラマティック広告は、反復的な手作業を機械に任せることで、広告枠の購入をより迅速かつ安価にします。以下に、プログラマティック広告の主なメリットをまとめました。
プログラマティック広告のメリット
- 時間の節約
- 適切なユーザーをターゲティングすることによる広告の効率化
- 広告費用の削減
- より多くのパブリッシャーにリーチ
- キャンペーンのROIに関する高い透明性の確保
つまり、プログラマティック広告なら、入札プロセスを最適化して価値の高いユーザーのみに広告費を投下できるということです。データインサイトとアルゴリズム技術を用いたプログラマティック広告のメディアバイイングにより、マーケターは適切なタイミングと費用でオーディエンスに広告を配信できます。
プログラマティック広告を活用するための6つのヒント
プログラマティック広告の使用を開始する前に、活用のヒントを以下で確認しましょう。
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KPIを定義する
プログラマティック広告の使用を開始する前に不可欠なのは、明確なKPIを定義することです。キャンペーンのコンバージョン率とKPIはアプリのカテゴリーによって変わることを念頭に置いておきましょう。この違いは、継続率およびエンゲージメントキャンペーンで特に顕著に表れます。たとえば、アプリの使用頻度を見ると、ユーザーはヘルス&ウェルネスアプリを毎日使用する一方で、フィンテックアプリの使用は月に数回程度というケースが多く見られます。
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キャンペーンを徹底的に計測する
プログラマティック広告を使用したキャンペーンを計測するにあたり、ユーザーリスト、ターゲット地域、URLスキーム、数百におよぶバナーのフォーマットなどを考慮する必要があります。しかし、ROAS、インプレッション、コンバーションなど、計測に使用する指標は、キャンペーンタイプ、アプリカテゴリー、全体的なマーケティングの目標に基づいていなければなりません。さらに、キャンペーンのABテストを行ってオーディエンスに効果的な施策を特定し、それを継続して繰り返すようにしましょう。
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DSPとモバイル アトリビューション プラットフォームを活用する
プログラマティックキャンペーンを初めて実施する場合は、経験豊富なモバイルDSPやモバイル アトリビューション プロバイダーを使用することをおすすめします。モバイルDSPやモバイル アトリビューション プロバイダーは、アプリにとって適切な意思決定をサポートするとともに、完全自動化されたプログラマティック バイイング アルゴリズムに基づいたリアルタイムな最適化機能を提供してくれるでしょう。最適化機能には、CTR(クリック率)だけでなく、個別のコホートKPIの目標達成に向けた最適化も含まれます。Adjustの便利なアナリティクスプラットフォームを活用してアプリの成長を促進する方法について今すぐお問い合わせください。
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類似オーディエンスのターゲティング
プログラマティックバイイングは、どのユーザーを広告配信の対象にするかという分析があってこそ、真の力を発揮します。重要なのは、インストール数だけではありません。コンバーションに至る可能性が高くROIの向上につながる、最も大きな利益をもたらすユーザーの獲得を目標にする必要があります。最も大きな価値をもたらすユーザーを特定するには、自社アプリのオーディエンスがモバイル広告と現在どのように関わっているかを把握する必要があります。その後、オーディエンス分析を使用して、分析したユーザーと同じ特性を持つオーディエンス(類似オーディエンス)に広告を配信することができます。
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リターゲティングを忘れずに行う
プログラマティック広告は、自社アプリのユーザーファネルについて理解している内容と一致させる必要があります。これには、ユーザーの離脱ポイントやアプリに戻ってくる理由、リターゲティングの対象にすべきユーザーなどが含まれます。たとえば、モバイルゲームアプリの分析では、「レベル3以上」に到達するユーザーの割合や、ファネルを進んだ先でアプリ内購入を行うユーザーの割合などが特定できます。このようなインサイトは、「レベル2」に到達したものの、アプリから離脱してしまったユーザーをリターゲティングする場合などに役立つでしょう。
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アプリをスケールさせる
経験豊富で自社アプリのROIに満足しているマーケターは、アプリをスケールさせることに力を入れるべきです。プログラマティック広告は、ROIを損なうことなくより多くの適切な広告を配信することが重要であり、スケールするための目標の達成に役立ちます。
Adjustは業界をリードするMMP(モバイル計測プロバイダー)であり、世界中の企業から選ばれています。Adjustは、マーケターがプログラマティック広告を最大限活用できるようにリアルタイムの最適化機能を提供しています。プログラマティック広告活用の最適化についてさらに詳細を知りたい場合は、ぜひお問い合わせください。
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