iOS 14.5の意味を理解するために:アトリビューションの方法と定義
Paul H. Müller, Key Advisor to the CEO, Adjust, 2021年4月27日.
AppleがiOS 14のAppTrackingTransparency framework(ATT)を発表して以来、この新しいプライバシーポリシーのもとで何ができ、何ができないかについてさまざまな情報が錯綜しました。
ここで留意すべき点は、AppleがATTで目指しているのは、EU一般データ保護規則(GDPR)のようなプライバシー規制の目的と非常に似ていることです。この新ルールは、ファーストパーティが個人を特定できる永続的なユーザーデータを、サードパーティと共有可能にするかどうかをユーザーが選択できるようにするものです。
そこまで複雑なことのようには思えないかもしれませんが、このルールが適用される範囲について多くの議論が巻き起こっているのはなぜなのでしょうか?
混乱する原因として、業界全体における共通言語が不足していることが挙げられます。中には、類似するコンセプトに対して異なる用語を使っている場合が多く見られます。
例えば、状況を複雑にしている要因のひとつ「フィンガープリント」を、実際のフィンガープリントと確率的アトリビューションのメソッドの両方を含むものとして包括的に使われていることが挙げられます。iOS 14.5の変更点を受けて、Adjustを含む一部の企業は、フィンガープリントから確率的アトリビューションへと完全に移行しています。つまり、「フィンガープリント」の意味をもう一度整理し、何がまだ許可されているのかを明らかにする必要があります。
フィンガープリントの定義について、理解しておくべきポイントを以下にまとめます。
- 「Fingerprinting(フィンガープリント)」は、デバイス情報を使用して永続的かつユニークなIDを作成し、複数のサイトを横断するユーザーを計測する方法です。フィンガープリントを取得するために使用されるテクニックの一部として、フォントメトリックの取得、WebGL(とキャンバス)プロパティの使用、特定のハードウェアのプロパティと組み合わせる方法などがあります。このデータによりフィンガープリントが永続的かつユニークなものになり、ユーザーを特定することができます。フィンガープリントとフィンガープリントIDの主な用途は、本来であれば共通のIDを共有することのないさまざまなWebサイトやアプリを横断してユーザーを計測することです。たとえば、フィンガープリントはデバイスグラフの作成に使用されますが、これは明らかにAppleのガイドラインに反しています。
- 「Probabilistic(確率的)」とは?モバイル計測プロバイダー(MMP)であるAdjustは、Webサイトやアプリを横断するユーザーの計測やターゲティングは行いません。Adjustが重視するのは、ある程度の正確さをもってインストールをエンゲージメントにアトリビュートすることです。インストールの8割はクリック後1時間以内に発生するため、そのようなアトリビューションは永続的なIDを必要としません。Adjustは、数時間以内で無効になる一時的なデータを使用して予測を立てることができます。そのため、確率的アトリビューションはAdjustにとって、デバイスのエントロピーとパターンに基づいているものです。Adjustは、クリックやインストールが発生した時間や、基本的なデバイス情報などのパラメーターを確認します。これらの限定されたパラメーターにより、クリック後、数時間にわたってインストールの流入元を予測できるようになります。
- SKAdNetworkがより正確なのであれば、なぜ確率的アトリビューションを使用する必要があるのですか?
確率的アトリビューションはSKAdNetworkの代わりになるものではなく、インストール流入元の判定においてはSKAdNetworkほど正確ではありません。しかし、キャンペーンを実施しているすべての広告主にとって、本当の意味でのメリットをもたらします。確率的アトリビューションでは、連携パートナーはキャンペーンを最適化してモデルを改善し、最も優れたROIを提供できます。
- つまり、連携パートナーとデータを共有できるということですか?
はい。たとえば、あるキーワードを連携パートナーと共有し、そのパートナーが確率的にインストールをキャンペーンにアトリビューションすることは許可されています。しかし、共有されたデータを使って、Webサイトやアプリを横断する計測やターゲティングはできません。
- 「コンバージョンモデリング(Conversion Modeling)」は、同意したユーザーの行動から推定して、すべてのユーザーの集合的な行動をモデル化することです。以下の2つの形態が許容されていると言われています。
- アトリビューションのため。 アナリティクス企業は、同意したユーザーがアプリをインストールした後の行動を計測し、そのデータを使用してすべてのユーザーに類似する指標を適用します。これにより、LTVやROASなどのコホート指標が分かるようになります。マーケターは正確なデータが必要となるため、データが正確であるかどうか常に確認することが重要です。コンバージョンモデルの正確性はオプトイン率に左右されます。
- ターゲティング広告のため。 同様に、ネットワークは同意したユーザーのサブセットを使用し、同じようなコンテクストのシグナルに基づいて、関連性のある広告配信に同意しなかったユーザーに広告を配信します。
- SKAdNetworkは、Appleのアトリビューションフレームワークです。これにより、広告チャネルはプライバシー重視のiOS 14リリース後の世界で、アトリビューションにおける信用できるデータソースを持つことができます。SKAdNetworkの強みは、ほぼ100%の精度で確定的アトリビューションを提供できることです。Adjustがテストを繰り返した結果、SKAdNetworkの精度は、IDFAを使用した確定的アトリビューションの精度と比較して2%以内の誤差に収まることが分かりました。例えば、あるキャンペーンで以前はIDFAを使用して1,000のインストールをアトリビュートしていたとすると、SKAdNetworkでは900のインストールと100の再ダウンロードをアトリビュートするかもしれません。これは、SKAdNetworkがiTunesアカウントへのインストールに対し、1回だけクレジットを付与するためです。ATT導入前とデータの一貫性を保つため、インストールと再ダウンロードの合計数を確認することが重要です。
ここで重要なのは、SKAdNetworkは依然として使用可能なすべてのインベントリを網羅しておらず、パブリッシャーもフレームワークに対応している途中過程であることです。ほぼ100%網羅されるまで、SKAdNetworkでレポートされるインストール数は、iOS 14.5以前にIDFAを介して確定的アトリビューションでレポートされていた数よりも少なくなります。
- 期待できるオプトイン率とは?世界のユーザーの25%がIDFAの共有をブロックしていることから、75%のユーザーに同意ポップアップが表示されることになります。Adjustの分析によると、それらのユーザーの最大40%がIDFAの共有に同意することが分かりました。つまり、アプリのIDFA取得率は30%以内と推測されます。プリ パーミッション プロンプトの詳細な作成方法については、ブログ「ATTに最適なオプトインをデザインする方法」をご覧ください。
iOS 14.5以降の世界で成功を収めるのはどのアプリでしょうか?プラットフォームが変化するたびに、企業によっては他の企業よりも多くのメリットを得ています。今回の変更点がもたらす意味を理解していないモバイル企業は、成長の機会を逃してしまうことになります。
しかし、変化にすばやく対応できる企業は、この機会を活かしてイノベーションにつなげることができます。ファーストパーティデータを使用し、迅速に動ける企業が成功に最も近い位置にいると言えるでしょう。
Adjustがアプリの成長をどうサポートできるかについての詳細は、最新ガイド「ポストiOS 14時代のグロースガイド:iOS 14のためのAdjustの対策とインサイト」をご覧ください。
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