【2022年版】知っておきたいマッチングアプリのマーケティング戦略
Adjust Team, Content & Insights, HQ, 2022年12月06日.
マッチングアプリ業界は2022年も成長を続けており、2019年1月と比較すると、年の初めですでに前年比17%増を記録しています。Business of Appsの直近のレポートでは、マッチングアプリのユーザー数が昨年3億2,390万人に増加し、マッチングアプリ市場の売上が56億1,000万米ドルに達したことが明らかになりました。
引き続き大きな需要があるにもかかわらず、マッチングアプリを含むスタートアップの90%が失敗しています。そのため、マッチングアプリを着実にマーケティングするための仕組みを構築し、ユーザーへアプリのユニークさと楽しみ方、そして個々のニーズに対応する機能をアピールすることが重要です。この記事では、2022年のマッチングアプリのマーケティング戦略として、最初にするべきことやオンラインでの存在感の高め方、有料広告によるユーザー獲得方法や効果的なマーケティングについて説明します。
2022年、マッチングアプリのセッション数とインストール数が増加
Adjustのデータは、マッチングアプリ業界のグローバルな成長トレンドを反映しています。世界のインストール数の伸びを月平均で見ると、コロナ禍による落ち込みを乗り越え、2022年上半期まで成長を続けていることがわかります。
同様に、マッチングアプリのセッション数は、2020年〜2022年前半にかけて世界的に安定した伸びを見せています。5月は2022年上半期の平均値よりインストール数が18.5%、セッション数が3.5%増加しており、ともに生産性の高さを示しています。
マッチングアプリのマーケティング戦略:最初にするべきこと
ユーザーは、アプローチ相手となるアクティブユーザーのいないマッチングアプリを利用しません。そのため、オーディエンスがアプリを起動した瞬間からユーザー生成コンテンツに触れてもらうことが不可欠です。ロイヤルユーザーのいるアクティブなコミュニティがまだ存在しない新しいアプリをリリースしようとしている開発者にとっては非常に難しいことですが、ローンチ前にアプリの勢いを高めておくことが重要です。
ニッチなターゲットを見つけてメッセージを定義する
マッチング市場はTinder、Bumble、Grindrなどの大手アプリが独占しているものの、ニッチなターゲットを見つけてロイヤリティが高いコミュニティを作るチャンスはたくさんあります。コミュニティを自然に成長させるにはターゲットオーディエンスを定義することが不可欠であり、アプリの価値を高めるのにも効果的です。
アプリ独自のセールスポイントとアプリを必要とするユーザー像を定義したら、潜在的なユーザーにどうビジョンを伝えるかを考える必要があります。例えば、The Leagueというマッチングアプリは「エリート層と出会って恋愛する」という目的のユーザーをターゲットにしています。ターゲットオーディエンスにアプリを信頼して利用してもらうために、アプリのユーザー入会プロセスでは入会資格の証明が求められます。The LeagueのWebサイトには次のように書かれています。「高度なスクリーニングおよびモニタリングシステムにより、長く続く関係を求めるエリートユーザーのコミュニティをバランスのとれた状態に保つことができます」。The Leagueは自社のコミュニティをエリートグループと位置付け、類似するユーザーにアピールして入会を促しています。さらに同社は、学歴やキャリアが似ているユーザーとの出会いを求める上で生じる問題にも対処しています。「LinkedInで本人証明をすることでプライバシーが守られ、同じく本人証明をしたビジネス上の知り合いや同僚をブロックできます」
これに対してBristlrは、「ヒゲのある人と、ヒゲを撫でたい人をつなぐ」ためのニッチなマッチングアプリで、よりカジュアルな出会いを提供しています。
マッチングアプリマーケティング:Webサイトからのオーガニックトラフィック
マッチングは多くの人が関心を持っているテーマであるため、公式ウェブサイトでプロモーションを行うのが効果的です。ランディングページではサービスのビジョンを示し、ローンチ前なら特にユーザー登録フォームを設けることが重要です。こうすることで、アプリに関心を持っているユーザーにリリース情報や今後の最新ニュースを届けることができます。さらにこのアプローチにより、ロイヤリティの高いコミュニティを事前に作っておくことが可能になります。
また、Webサイトのブログを定期的に更新するのもオンラインマッチングへのユーザーの関心を集めるのに効果的で、ユーザーをアプリに取り込むチャンスが生まれます。以下に、オンラインマッチングサービスを宣伝するのに最適なブログの書き方と例を4つ示します。
1. マッチングに対する考え方のニュアンスを細かく伝える
ブログは、アプリが提供するサービスがマッチング市場でどの位置付けになるかを伝えるのに最適なスペースです。例えばOkCupidは、ユーザーがプロフィールに任意の代名詞を追加できる機能をブログ記事で発表しました。この記事には次のように書かれています。「OkCupidは、LGBTQのユーザーが自分が呼ばれたい代名詞をプロフィール欄で共有できる、最初で唯一のマッチングアプリです」これにより、新機能をユーザーに伝えるだけでなく、包括性を重視するというブランドの考え方もアピールできます。同記事は、LGBTQの人々に対する理解と受け入れを進める取り組みをしているGLAADとのコラボレーションに関するストーリーも紹介しています。
2. SEO対策コンテンツを作成する
マッチングの文化においては、マッチングアプリが検索エンジンの上位にランクするためのチャンスがたくさんあり、企業は人々の関心をオーガニックトラフィックへとつなげることができます。例えばBumbleは、ブログ「The Buzz」でゴースティングガイドを作成し、「ゴースティング」で検索するとこの記事が上位に表示されます。これはブランド認知を向上させるためのコスト効率のいい方法です。
3. ソーシャルメディアで話題になるコンテンツを作成する
ブログは、複数のソーシャルメディアチャネルで共有され、話題になるコンテンツを作成するチャンスでもあります。重要なのは、読者がアプリを利用したくなる内容にすることです。例えば、全員女性のチームが開発したマッチングアプリ「Once」は、直感、外向性、身体性、独立性という4つのカテゴリーで自分の心理学的特性を決定するという内容をブログ記事にしたところ、ネットで大きな話題になりました。この記事は、4つのカテゴリーそれぞれについて説明し、読者がアプリを試して、性格診断クイズで自分にぴったりな相手を見つけたいと思わせる内容となっています。
4. ユーザーのサクセスストーリーを共有する
ランディングページとブログの両方に共通して重要なのは、マッチングアプリを利用したユーザーのサクセスストーリーを紹介することです。ユーザーは、他のユーザーの体験談を知りたがっており、実際にマッチングが成立したカップルを紹介することで説得力が増します。例えばマッチングアプリのMatch.comは、ユーザーの声を紹介するページに体験談を載せています。このページでは、アプリを利用して出会った260万組のカップルについて、お互いが惹かれ合ったポイントや将来に向けた見通しを詳しく紹介しています。ここで注意したいのは、紹介するストーリーのタイプをアプリ独自の売り込みポイントに合わせる必要があることです。
アプリストア最適化(ASO)
ASOもまた、競合をリードするのに役立つ重要な手法です。市場が飽和する中、マッチングアプリはASOを使ってサービスの価値を証明し、独自の売り込みポイントを伝える必要があります。さらに、質の高いASOはオーガニックインストールを促進し、最も高い価値をもたらすユーザーをアプリに取り込むことができます。
以下は、ASOを実施するにあたっての5つの重要点です。
- アプリ名にキーワード(マッチングを連想させるもの、アプリ独自の特徴など)を含める
- キーワードをアプリの説明文に加える
- コンテンツをローカライズして最大限の成果を出す
- アプリのメインカテゴリーの他にサブカテゴリーを設定し、より多くのユーザーにリーチする
- スクリーンショットやユーザーに役立つ画像を含め、オーガニックインストールを引き付ける
さらに、アプリに満足しているユーザーにアプリストアでレビューを書いてもらうことで、他のユーザーがアプリをインストールするきっかけを増やすことができます。例えば、特定の人数とのマッチングが成立した時にアプリの評価を依頼するプロンプトを表示することで、最もアクティブなユーザーにアプリのレビューを書いてもらえます。
有料広告によるユーザー獲得:最も高い価値をもたらすユーザーを特定する
有料広告によるユーザー獲得は、マッチングアプリのマーケティングを成功させるために欠かせない要素です。これによりターゲットオーディエンスにリーチし、最も高い価値をもたらすユーザーを特定して流入元のチャネルを知ることができます。ここで役立つのがアトリビューションパートナーです。正しいインサイトを得ることで、ユーザーの行動パターンを把握してキャンペーンを最適化し、マーケティングを長期にわたって成功させることができます。例えばAdjustのオーディエンスビルダーでは、Adjustのデータを利用してオーディエンスをセグメント分けすることができます。これにより類似オーディエンスを作成し、より優れたマーケティングの成果を出すことができます。Kongregate マーケティング・広告マネタイゼーション VPのジェフ・グリアン(Jeff Gurian)氏は、オーディエンスビルダーの主なメリットは、高い価値をもたらすことが分かっているユーザーに対して広告を表示できることだと述べています。
ASOと有料ユーザー獲得についてのさらなるインサイトは、アプリユーザー100万突破のためのグロース完全ガイド パート1をご覧ください。
マッチングアプリマーケティングを成功させるための4つの効果的な方法
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アプリにゲーミフィケーションを取り入れる
ゲーミフィケーションによってマッチングアプリを改善する方法を検討していないのであれば、ユーザーを保持してエクスペリエンスを向上させるための根本的な方法を見逃していることになります。ゲーミフィケーションデザインの第一人者であるユーカイ・チョウ(Yu-kai Chou)氏は、自身のTEDxトークにおいてゲーミフィケーションという用語を「遊びの力を活用したもの」と説明しており、マッチングアプリにゲームの要素を取り入れるべき理由を的確に示しています。ゲーミフィケーションがマッチング市場において特に効果的なのは、マッチングアプリはゲームのようにユーザーが楽しむものだからです。例えば、マッチングアプリのJigsawは、マッチングした相手の写真をジグソーパズルにして、会話を通して1ピースずつ埋めていくことで最終的に顔が見れるというゲーム性を取り入れています。どうしたらアプリが競合との差をつけ、より楽しく簡単に使えるようになるかを理解することで、どの部分にゲーミフィケーションを取り入れるかが分かります。例えば、チャットでGIF動画や絵文字を使えるようにする、といった簡単なことでも効果を発揮します。ゲーミフィケーションが必要な機能に関するユーザーの声に耳を傾け、より楽しいアプリエクスペリエンスを提供しましょう。
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ユーザー生成コンテンツを共有する
ユーザー生成コンテンツは、オーディエンスが信頼できると感じる方法でメッセージを伝えるのに効果的です。企業が自社のWebサイト、ソーシャルメディアチャネルやその他のデジタルプラットフォームで適切なユーザー生成コンテンツを共有した場合、顧客エンゲージメントが28%増加するというデータがあります。
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ソーシャルメディアをアプリに統合する
マッチングアプリはソーシャルに利用されるようにデザインされているため、ソーシャルネットワーク機能を埋め込むことでそのメリットを得られます。例えば、TinderはFacebookと連携し、ユーザーがFacebookアカウントで簡単にユーザー登録できるようにしています。ソーシャルメディアのAPIを賢く利用することで、ユーザーがすでに慣れ親しんでいる機能を活用することができます。
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マッチングアプリにおけるソーシャルディスカバリー
New York Timesは最近の記事で、中国におけるマッチングアプリ市場の盛り上がりを報じました。興味深いのは、人々はアプリでの出会いに必ずしも恋愛を求めているわけではなく、社会的なつながりを作れる点が支持されているということです。多くのアプリは、同じような性格、関心事項、趣味のユーザー同士がつながれる「ソーシャルディスカバリー」機能を追加しています。Bumbleはマッチングアプリによる友達作りの需要にいち早く目を付け、2016年にBumble BFFをリリースしました。これに続いてTinderも、さまざまなストーリーを参加者が一緒に作っていくインタラクティブな機能、Swipe Nightを導入しています。この機能は、毎回変わるシナリオに基づいて、ユーザーが別のユーザーと「ファストチャット」で会話しながらミステリーを解決する体験型ドラマです。ストーリーの最後には、相手とマッチングしたいかどうかを決めることができます。
ソーシャルディスカバリー機能を追加し、さまざまな人とつながれる強みをアピールできれば、マッチングアプリでより多くのユーザーを取り込めるでしょう。詳細は、マッチングアプリの成長要因となるソーシャルな機能についてのブログ記事(英語)をご覧ください。
また、アプリパフォーマンスのグローバルベンチマークを解説した「モバイルアプリトレンド2022」レポートを始め、モバイルアプリのハイパーパーソナライゼーションに関する5つのヒント(英語)、ABテストについて知っておきたいこと(英語)も合わせてご確認ください。
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