ブログ アプリを世界展開するための方法とマーケティング戦略

アプリを世界展開するための方法とマーケティング戦略

アプリのローンチが各拠点で成功して、良いパフォーマンスを維持できたとしても、世界的規模でアプリを成長させるためには、よりしっかりした拡大戦略を展開することが大切です。ユーザーが、アプリを通してこれまで以上につながり合うことができたとしても、各地域特有の課題や検討事項も存在します。データ主導のインサイトとターゲット市場の調査をしながら、それらを解決していくことが大切です。このガイドでは、アプリを世界中のオーディエンスに届けるために検討しておきたいポイントをご紹介します。

はじめに:市場調査

アプリカテゴリーに関係なく、マーケターはApp StoreやGoogle Play ストアで激しい競争に直面しています。2020年11月のStatistaのレポートによると、Google Play ストアは280万のアプリが登録されている、世界最大規模のアプリストアです。それに続き、App Storeは、196万アプリをiOS向けに取り扱っています。これらを合わせると、ユーザーは数え切れないほど存在するオプションの中からアプリを選択していることが分かります。これは、アプリを世界展開する前に、徹底的な市場調査をする必要があることを意味します。他社がまだ目をつけていないニッチなニーズやマーケティングチャネル、競合他社の欠点などを、すべて洗い出す必要があるのです。

市場調査をする際は、以下を定義しましょう

  • アプリのターゲットオーディエンス
  • アプリ独自のセールスポイント
  • 競合が提供しているサービス
  • アプリのローンチに最適な時期

マーケティングでできることは予算に制限されますが、市場調査のデータは、アプリに最適なマーケティングのありかたを明らかにしてくれます。新しい地域でアプリをローンチする際に、最も良い状態でスタートができるようになるのです。

何よりも優先するべきなのは、競合よりも優れたサービスを提供する方法を特定することです。たとえば、競合のアプリストアページに書かれたレビューを読み、ユーザー(ターゲットオーディエンス)がそのアプリのどの機能や特徴に不満があるかを理解することで、ユーザーが求めているものを把握できます。また、YouTubeレビューやブログを見て、ユーザーが競合のアプリについてどんなコメントをしているかを調べてみることもおすすめします。

競合他社を調査する際のチェックリスト

競合のアプリについて市場調査をする際は、以下の点をクリアにしましょう。

  1. 競合はどのように、どの程度の成功を収めているか?
  2. 競合のアプリの欠点は何か?
  3. 競合のアプリに比べて、自社のアプリはターゲットオーディエンスのニーズに応えられるか?
  4. 競合のアプリのユーザージャーニーはどれだけ合理化されているか?自社のアプリに比べてどうか?
  5. 競合のアプリは機能的で最適化されたUIデザインを採用しているか?
  6. 競合はどのような方法でアプリをマーケティングしているか?

アプリのKPIを定義する

新しい地域でアプリが上手くいっているかどうかを確認するには、KPI(主要業績評価指標)を定義する必要があります。求められる結果を達成してアプリを成長させるには、計測可能な目標を設定することが重要です。

パフォーマンスのベンチマーク

  • アクティブユーザー数: 通常DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)、WAU(1週間あたりのアクティブユーザー数)、MAU(1ヶ月あたりのアクティブユーザー数)で計測
  • コスト: CPA(コンバージョン1件あたりの費用)、インストール単価(CPI)、1000回表示あたりの広告費(CPM)で計測
  • CTR(クリック率) (クリックスルー率):広告クリエイティブの有効性
  • コンバージョン率: あるアクションを完了したユーザーの割合
  • 継続率: X日後にアプリを利用しているユーザーの割合
  • リエンゲージメント: アプリに呼び戻されたユーザーの数
  • 離脱率: ユーザーがアプリに戻るのを止める割合
  • アンインストール: アプリをアンインストールするユーザー数(とそのタイミング)
  • ROI(投資利益率): 投資に対する利益と損失の計算
  • ROAS(広告費用回収率): 各チャネルに対して投入した広告費用に対して得られた収益
  • ARPU(各ユーザーごとの平均収益): 新規ユーザーごとに発生した平均収益
  • LTV(生涯価値): 離脱前にユーザーが支出すると推定される合計金額

その他のパフォーマンス目標として、アプリストアのランキングやユーザーからの評価があります。これらのKPIの平均値は地域によって異なるため、ターゲティングする地域の業界ベンチマークによる期待値を確認し、それを基に目標を設定すると良いでしょう。地域ごとの目標とKPIを定義したら、次のステップはマーケティング戦略を立てることです。

アプリの機能

さまざまなチャネルにまたがって広告費用を配分する前に、アプリが100%機能すること、そしてより多くのオーディエンスに向けてローンチする準備ができていることを確認する必要があります。アプリのパフォーマンスに関する問題は、ユーザーによるアプリ離脱やアンインストールにつながる可能性があるため、アプリパフォーマンスのあらゆる側面をテストすることが不可欠です。これにより、ユーザーの離脱を防いで広告費の無駄を無くし、アプリストアでの低評価を回避することができます。

モバイルアプリの機能性:3つの重要なテスト

  1. トラフィックが増加した時のパフォーマンステスト: ユーザーをアプリに誘導したものの、新規インストール数が大幅に増えた時にアプリの機能が損なわれてしまっては意味がありません。アプリを世界的に展開する前に、トラフィックが増えて負荷がかかった時にアプリパフォーマンスがどうなるかをテストしておきましょう。
  2. ハードウェアテスト: サーバー容量の不足など、ハードウェアが原因でアプリのパフォーマンスが低下することがないよう、モバイルテストで確認する必要があります。
  3. 危機的な状況下でのアプリパフォーマンステスト: クラッシュするリスクを減らすために、アプリパフォーマンスの限界をテストすることも重要です。これは、Akamai CloudTestなどのモバイルアプリテストツールを使ってテストできます。

世界へ進出:包括的なマーケティング戦略を展開

アプリの世界展開を目指す上で考慮するべきマーケティング戦略のポイントを以下に挙げました。

ターゲットオーディエンスに合わせたUX作り

マーケティングの取り組みで重視するべきことは、アプリの成長拡大を狙う地域で最高のユーザーエクスペリエンスを作り出すことです。コンテンツのローカリゼーションや地域ごとの調整も必要になりますが、ユーザーにアプリを紹介する前に、必ずユーザーエクスペリエンスを最適化しておくことが必要です。

ローカリゼーション

ローカリゼーションとは、特定の市場に合わせてアプリをカスタマイズすることです。アプリを世界的にローンチするのであれば、このステップは欠かせません。ターゲット地域での知名度が上がり、世界市場に足を踏み入れやすくなるからです。直近のDistomoの調査 によると、ユーザーが自分の母国語で利用できるアプリをダウンロードする可能性は、そうでないアプリよりも128%高いことが分かりました。また、複数の企業がアプリをローカライズした結果、各国の収益が26%増加したというデータもあります。

アプリをローカライズする方法:4つのステップ

  1. リソース
    アプリをローカライズする最初のステップは、新しい市場に対応するために必要なすべてのリソースを揃えることです。ターゲット市場に合わせたコンテンツ、コピー、画像、動画などがこれにあたります。
  2. 翻訳
    コンテンツを翻訳する際は、製品が持つ特徴や市場における立ち位置などのコンテキスト(背景情報)を翻訳者と共有するようにしましょう。これにより、翻訳する際に誤解が生まれるのを避け、その先も適切なリソースを使い続けることができます。アプリ開発者は、管理ソフトウェアが搭載された翻訳ツールを使うことで翻訳者に適切なコンテキストを提供できます。
  3. レイアウト
    アプリの言語を変更すると、文字や文の長さ、テキストを読む向きの違いなどから、デザインレイアウトにも影響が出ます。そのため、デザインチームはローカライズされたテキストに合わせてアプリのデザインを調整する必要があります。
  4. テスト
    リソースが翻訳されたら、適切なコンテキストが使われているか、異なるデバイスでデザインがどう表示されるかなど、その結果をテストします。

アプリストア最適化のローカリゼーション

すでに翻訳されたリソースに加えて、それぞれの地域に合わせてアプリストアのページもローカライズする必要があります。ASO(アプリストア最適化)はアプリストアのランキングを左右する重要な要素です。アプリを見つけやすくすることで、より多くのオーガニックユーザーをアプリに引きつける効果もあります。

ASOの取り組みとして、アプリ名や説明文にキーワードを入れる、適切なアプリカテゴリーを選択する、アプリの情報を伝わりやすくするために注目を引くスクリーンショットを使用する、などがあります。The Toolと自動車マーケットプレイスアプリ『AutoScout24』のケーススタディによると、ASOをローカライズしたことにより、App Storeでのアプリの知名度が74%向上し、ダウンロード数が38%増加しました。同調査では次のように述べられています。「ASOにおいてその国特有の言語を考慮し、キーワード戦略を取り入れたことで、[AutoScout24]は大きな成功を収め、アプリの知名度とインストール数が大幅に伸びました」

アプリストアのページを適切にローカライズするには、徹底した調査が重要です。AppTweakのASO専門家、サラ・B・トウイミ(Sarah B. Touimi)氏は次のように話しています。「ターゲット市場を調査することで、その国や地域の文化に合わせた、適切なアプリのビジュアルを作り出すことができます。なぜなら、使用するべきコードや配色、フォント、記号などは国によって違うからです。ビジュアルが適切だと、そのアプリがまるでターゲット市場のために開発されたかのように感じられるようになり、アプリストアでの知名度もさらに向上します」。トウイミ氏は開発者に、それぞれの国や地域に関連するキーワードをリストアップすることを推奨しています。

アプリのソフトローンチを検討する

Adjustが開催したウェビナー「アジアからアプリをローンチする方法」では、ROI重視のモバイル代理店、Addict MobileのCEOであるグレゴアール・メルシェ(Grégoire Mercier)氏を招き、欧米でアプリのローンチを成功させる方法について語ってもらいました。メルシェ氏は、同社はアプリを大規模にローンチする前に、まずソフトローンチをすると説明しました。英語を話す国々でアプリのローンチを計画している開発者は、本格的なローンチ前にソフトローンチをすることで、アプリの成長可能性を評価できます。カナダやオーストラリアなどの他に、北欧諸国もソフトローンチの対象に加えることが可能です。メルシェ氏は次のように話しています。「こうした地域のユーザーにはヨーロッパのライフスタイルやテイストが根付いているため、英語を話す国々、アングロサクソン系の国々、そしてヨーロッパ諸国を一緒にテストすることができます。もしアジアの方が実施しやすいのであれば、香港や台湾、フィリピンなどのアジア諸国を対象にしても良いでしょう」

ローンチ後のパフォーマンス分析

アプリをローンチしたら、開発者はパフォーマンスデータを収集し、結果を分析できます。アトリビューションパートナーからアナリティクスレポートとローデータを受け取り、最もパフォーマンスの高いマーケティングチャネルを特定するとともに、今後のキャンペーン最適化方法を検討しましょう。さらに、アプリアナリティクスに投資することで、新しいターゲット市場のユーザーについて理解し、他の市場にない特徴は何か、そしていかに効果的にターゲティングができるかを把握できます。こうしたデータ主導の意思決定が、コンバージョン率や継続率、LTVの向上につながります。

アプリビジネスを立ち上げ、拡大する方法については、ブログ「アプリのローンチを成功させるために:市場調査から収益化まで」をご覧ください。また、アジア市場でアプリをローンチするためのガイド(英語のみ)も併せてご覧ください。

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