景気低迷に負けず成長を続ける2022年のフィンテックアプリ
Alix Carman, Content Writer, Adjust, 2022年11月14日.
2020年3月、多くの国がパンデミックを抑制すべく実施した最初のロックダウンにより、フィンテックアプリの普及率が世界的に急拡大しました。消費者は日常のあらゆる場面で人と接触するのを避けるようになり、お金の使い方や管理方法も変化しました。ここ数年で見られた口座や資産のデジタル化普及が追い風となり、フィンテックアプリは成長し続けています。世界的な景気後退の懸念が高まる今、フィンテックアプリの使用状況は興味深い傾向を示しています。
コロナ禍に起因するフィンテックの急成長
2020年上半期、これまで現金が主な決済手段だった企業がキャッシュレス決済に移行したことで、フィンテックアプリのインストール数は急激に増え始めました。2020年2月〜3月にかけて、フィンテックアプリのインストール数は世界全体で前月比26%増と大幅に増加しています。その後、一時減少した後もインストール数は増え続け、2021年11月にピークに達しました。2021年11月のインストール数は前月比11%増で、2021年の月平均を32%上回る驚異的な伸びを記録したのです。
北米では、主にフィンテックのサブカテゴリーである決済アプリによってインストール数が急増し、2021年10月〜11月にかけて前月比で60%近く増加しました。特に、ブラックフライデーはEコマースの一大イベントとして人気が高まっているため、11月はEコマースアプリのマーケターにとって重要な期間になりました。ブラックフライデーとサイバーマンデー、それに関連する商業戦略がパンデミックによる勢いと相まって、この急激な成長を引き起こしたと考えられます。実際に、2020年でフィンテックアプリのパフォーマンスが最も高かったのは11月でしたが、2021年11月も前年同月比66%と高い伸びを示しました。
世界的な景気後退が懸念され、人々が消費に消極的になったことにより、2022年第2四半期はインストール数がわずかに減少しました。しかし、上半期末(6月)の数値は前年比で4%増となっています。つまり、現時点では今年のフィンテックアプリのインストール数が全体的に増加傾向にあるといえるでしょう。
2022年のデータを深く掘り下げると、すべてのサブカテゴリーにおいて年初にインストール数が一度落ち込んだ後、再び立ち直っていることがわかります。仮想通貨アプリは今年半ばにインストール数が大幅に減っていますが、その後、徐々に回復しつつあり、株式投資アプリも同様に年初からインストール数が低迷していたものの、2022年8月から少しずつ増加傾向を見せています。
2022年成長が期待されるフィンテックアプリのセッション数
セッション数は、全体的により前向きな見通しです。2021年末に見られたインストール数の急増とその後のごく自然な横ばいへの推移を考慮しなければ、2020年初めから2022年にかけてセッション数が継続的に増加していることがわかります。
実際に、2022年はインストール後の30日間全体を通じて、第2四半期のユーザーあたりの1日のセッション数が第1四半期のそれよりも高い形で推移しています。平均すると、第2四半期のユーザーあたりの1日のセッション数は、第1四半期よりもほぼ2%高いことがわかりました。フィンテックのインストール数は2021年第2四半期に急激に伸びた後、減少して横ばいになっていますが、セッション数とユーザーあたりの1日のセッション数は増加しています。この事実は、フィンテックアプリをインストールしている人々が顧客生涯価値(LTV)の高いユーザーであることを物語っています。
また2022年は、アプリ内収益も2021年の数字を大きく上回る結果となりました。今年に入ってからは、3月を除くほとんどの月でアプリ内収益が前年比20~30%増を記録し、1月には34%増に達しています。
継続率が示すユーザーエンゲージメントの高さ
さらに、フィンテックユーザーのエンゲージメントの高さを示すように、継続率は2022年上半期を通して比較的安定して推移しています。フィンテックのサブカテゴリーである株式投資アプリでは、第2四半期のインストール後30日間のアプリ継続率が第1四半期よりも高い結果となりました。29日目、さらには30日目においても、第2四半期の株式投資アプリの継続率は第1四半期を13%も上回っています。
エンゲージメントの高いオーディエンスを頼りに高い継続率を維持
高い価値をもたらすユーザーのエンゲージメントを向上させるには、以下のような施策が有効だと考えられます。
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3月により多くのキャンペーン予算を割り当てる
Adjustのデータによると、グローバルで見たフィンテックアプリのインストール数とセッション数は、2020年3月、2021年3月、2022年3月に急増しています。2020年3月の急成長は新型コロナウイルス感染症に起因するところが大きいものの、それでも2021年3月が前月比7%増、2022年3月が前月比5%増という結果になりました。
3月のエンゲージメントが急激に高まったことで、マーケターにとってユーザー獲得キャンペーンにより多くの予算を投入するきっかけができたのです。同様に4月は、継続率の維持を目的としたリエンゲージメント戦略を計画するのに最適な時期といえるでしょう。
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フィンテックアプリにメタ要素を追加する
2022年上半期、アプリ内収益が前四半期比で増加した一方で、多くのユーザーは景気後退を警戒して消費を控えています。そのため、アプリのコア機能を補完する機能を開発して、ユーザーが消費に消極的なときでも継続的なエンゲージメントを促すようにしましょう。
手法のひとつとして、承認欲求に訴えかける形で、同じユーザー層の人たちがどのようにアプリを利用しているかをユーザーに示すことができます(例:「27~35歳の女性の25%が、収入の10%を毎月投資に充てています」)。 アプリ内リワードとして表示するのもいいでしょう(例:「今月の目標貯金額を達成しました!『貯蓄のプロ』バッジをプレゼントします!」 )。クリエイティブな手法でテストを行い、さまざまなメタレイヤーから学んだことをエンゲージメント向上に活かしましょう。
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ユーザーの声に耳を傾ける
ユーザーがアプリを定期的に使用していてアプリに関心があるうちに、アプリレビュー、アプリ内プロンプト、メールアンケートでユーザーの声を集め、うまくいっている施策をさらに強化し、効果が低いものを改善しましょう。ユーザージャーニーにおいて離脱が最も多いタイミングを特定し、そこにある問題を緩和したりプロンプトを表示したりすることで、ユーザー自身から直接明確なインサイトが得られます。
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ATT オプトインを最大化する
ユーザーレベルのデータは、アプリの強力なパフォーマンスを維持する上で非常に重要です。特に、アプリがiOSにしか対応していない場合や、インストールの大半がiOSデバイスによるものである場合は、ユーザー同意を確保するための堅牢な戦略を構築することをおすすめします。Adjustでは、お客様がiOS 14.5以降のマーケティングに対応するのをサポートする次世代ソリューションの開発に取り組んでいます。また、アプリの顧客に最適な戦略を見つけるのに役立つ、iOSに関する豊富なリソースもご用意しています。
今年はフィンテック業界全体にとっても厳しい1年だったにもかかわらず、アプリはその力強さを示し、立ち直り始めていることがわかりました。年末に向かっての第4四半期(さらには「第5四半期」)は、この急成長の波に乗り、重要な顧客を保持するための機会を掴む絶好のタイミングです。
2022年のフィンテックアプリのトレンドに関する詳細は、「モバイルアプリトレンドレポート 2022」をご覧ください。また、INSEA地域のフィンテックの動向については「AdjustとLiftoffのモバイルアプリトレンド 2022:日本版」をご覧ください。さらに、「デジタル通貨アプリトレンドレポート2022—AdjustとApptopiaの共同調査」では仮想通貨とデジタル通貨の成長要因について詳しく解説しています。
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