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中国製アプリ: 国際的な成功につながるアプリカテゴリーと国・地域
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Tiahn Wetzler, Director, Content & Insights, Adjust, 2022年8月25日.
多くの場合、アプリのパフォーマンスは自国市場における成功によって評価され、ローカライズした各国版や世界全体でのパフォーマンスの分析は重要視されない傾向にあります。一方で、中国製アプリの開発者やマーケティングチームの大半が最も力を注いでいるのは、海外市場です。2021年、PUBG、原神、王者栄耀といった中国のゲームアプリは、世界のモバイルアプリ売上高のトップ4入りを果たしました。3つのタイトルは、いずれも10億米ドル以上の合計収益を記録し、PUBGの収益はなんと20.1億ドルに達しています。上位4位にランクインしたもう1つのアプリも、中国で開発されたTikTokに他なりません。
この点を踏まえて今回は、「収益性が最も高い国」と「成長率が最も高いカテゴリー」を分析してみました。
3つの重要ポイント
- インドネシア、シンガポール、フィリピンでは中国製アプリが大人気で、ほぼすべてのカテゴリーで高いインストール数を記録しています。インド、米国、ブラジルでも、軒並み上位にランクインしています。
- 中国製アプリの普及率で見ると、上位3ヶ国は米国、インド、イギリスです。
- カテゴリー別で見ると、世界の総インストール数に占める中国製アプリの割合が高いのは、ユーティリティ、エンターテイメント、ゲームです。
国別で見た中国製アプリの普及率: 全体的な傾向
まずは、普及率から見ていきましょう。以下のグラフでは、中国製アプリの普及率が最も高い5ヶ国を確認できます。Adjustが計測する中国製アプリのうち、他国で利用可能なアプリの割合は以下のとおりです。
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Adjustのデータによると、すべての中国製アプリの78%が米国で利用可能です。それに続くのは、インド(59%)、イギリス(49%)、フィリピン(47%)、シンガポール(47%)です。
世界の主要な国々で利用可能な中国製アプリの割合が把握できたので、次にデータをより深く掘り下げていきましょう。上記の国々で中国製アプリが市場全体に占めるインストール数の割合は、どのくらいなのでしょうか。言い換えるなら、すべての中国製アプリの78%が米国でリリースされているとして、それは「米国のアプリインストール数全体の何割」なのでしょうか。
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この角度から見ると、状況はだいぶ変わります。最上位に躍り出たのはミャンマーで、中国製アプリが市場全体に占める割合は32%です。一方、米国やイギリスはそれぞれ7%と5%になっています。
カテゴリー別で見たインストール数の割合
北米、LATAM、EMEA、APACで数多くの中国製アプリがリリースされていることからも、中国で開発されたアプリが世界中で好評なのは明らかです。中国のゲームアプリの人気が高いのも言わずもがなですが、世界の総インストール数に占める割合が最も多いのは、どのアプリカテゴリーでしょうか。
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予想に反して、ゲームアプリは3位止まりでした。総インストール数に占める割合が最も多いのは、中国のユーティリティアプリ(VPNアプリ、PDFリーダー、懐中電灯アプリなど)です。ユーティリティアプリの世界全体におけるインストール数の29%を中国製アプリが占めています。それに続くのが、エンターテイメントアプリの16%とゲームアプリの13%です。
国別とカテゴリー別で見たインストール数の割合
世界におけるアプリの総インストール数に占める割合が最も大きいのは、中国のユーティリティアプリです。しかし、一部の国での割合は、他の国に比べて高くなっています。フィリピンとインドネシアでは、ユーティリティアプリのインストール数の約45%は中国製アプリで、エジプト(44%)、アラブ首長国連邦(37%)やインド(36%)がそれに続いています。
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エンターテイメントアプリの場合、ユーティリティアプリとは状況が異なります。1位はネパールで、エンターテイメントアプリのインストール数の大半(68%)が中国製アプリです。それに続くのがインド(41%)、バングラデシュ(40%)、パキスタン(31%)で、いずれも高い割合となっています。中国のエンターテイメントアプリは、全体的にアジアと中東で最も人気が高い傾向にあります。また、ブラジルも6%と特筆に値する数です。
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ゲームアプリに焦点を当てると、中国製アプリのインストール数の割合が最も高いのはインドネシアとシンガポールで、どちらも28%と驚異的な数字を記録しています。フィリピン(24%)、カンボジア(23%)、ベトナム(21%)がそれに続きます。エンターテイメントアプリ同様、中国のゲームアプリはアジア全域で絶大な人気を誇りますが、他のカテゴリーと比べるとEMEAと北米で人気が高いことが見てとれます。ロシアにおける中国のゲームアプリの割合は11%で、それにドイツの9%、フランスの8%、イギリスと米国の7%(意外にも日本と同数)が続きます。ブラジルも12%と高めの割合です。
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主要な市場と最大の収益源
人気のカテゴリーは国・地域によって異なりますが、カテゴリーを問わず、中国製アプリが世界で成功を収める可能性が高いのは明らかです。中国のアプリ開発者やマーケターが注目すべき国や市場は、アプリの収益化モデルや国際的な関わりによってまったく異なります。
アプリカテゴリーに関わらず、戦略は基本的に2つです。一つは大量のインストール数を獲得すること(ハイパーカジュアルゲーム向け)、もう一つは顧客生涯価値(LTV)の高いユーザーを見つけること(エンターテイメントアプリ向け)でしょう。米国などの一部の市場では、確実に収益をあげることができますが、ユーザーの獲得コストは、他の地域よりもかなり高くなります。インドネシアとインドは、どちらもインストール数を期待できる大規模な市場ですが、比較的低い収益しか生まれません。
国際市場について十分に理解できたら、インドネシアなど、アプリにとって最適なスタート地点となる国・地域を特定しましょう。まずは、インドネシアのような国・地域でテスト運用を行ってから、インストール数は少なくても収益につながる市場に乗り出すことをお勧めします。
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