アプリ収益化のトレンド:2022年のアプリはどう収益を生み出すか
David Hartery, Senior Content Marketing Editor, Adjust, 2021年12月16日.
モバイルアプリ市場の価値は、2026年までに4,070億ドルに達すると予測されており、収益化のための創造的な手法が次々に生まれています。成果が実証されているアプリ内広告収益からサブスクリプションまで、アプリの収益化モデルはかつてないほど多様化しました。
モバイルマーケターが競争の激しい市場を勝ち抜くには、収益化戦略を最適化し、多角化する方法を検討することが重要です。したがって、人気の高い収益化の事例や将来のトレンドを見極める最新情報をアプリマーケターが常に把握しておくことが鍵となるでしょう。本稿では、アプリ収益化のトレンドやその仕組みについて取り上げ、近い将来どんなアプリビジネスモデルが使用されることになるかを予測します。
アプリ収益化:重要なトレンドとその仕組み
1. アプリ内広告
アプリ内広告(アプリの内部へ配置された広告)は、アプリ収益化エコシステムの重要な構成要素です。Statistaによると、2019年のモバイル広告費用は1,900億ドルに達しました。この額は今後も増加し、2022年には2,800億ドルに達すると予測されています。
アプリ内広告のトレンド
動画リワード広告: この広告フォーマットでは、広告を表示する際にゲーミフィケーションを取り入れています。ユーザーは広告の視聴時間に対してリワードを受け取れるため、アプリ内広告を見る動機となります。たとえばモバイルゲームでは、30秒の広告を見たリワードとして、コインや追加ライフをユーザーにプレゼントするといった施策があります。
ゲーム内広告に焦点を当てたeMarketerのレポートによると、動画リワード広告は最も普及しているフォーマットです。Report Oceanのデータは、世界的なゲーム内広告市場の2020年の市場価値は約52億9,000万ドルであり、2021年〜2027年の間に19.5%以上増加すると予測しています。さらにUnity Adsでは、ゲーム内広告が「最も人気のある収益源」と評しています。
動画リワード広告の大きなメリットは、ユーザーがオプトインした場合に広告を配信するという点です。つまりユーザーは、提示されるリワードに関心がない場合は、これらの広告を完全に回避できるのです。プログラマティック広告を専門とするOpenXによると、このタイプの広告に対してリテイラーの割引がリワードとして付与される場合、ユーザーの77%が進んで30秒の広告を視聴しています。動画リワード広告は、多くのアプリ開発者に選ばれるフォーマットと言えるでしょう。
プレイアブル広告(Playable ads): ゲームのクオリティをアピールするのに最も効果的なのは、ユーザーにゲームを体験してもらうことです。プレイアブル広告なら、ユーザーはアプリをインストールせずに、モバイルゲームの一部をプレイできます。技術が進化するにつれ、プレイアブル広告は広告主にとってますます人気のある選択肢になりました。米国の代理店のマーケティング専門家からも優れた評判を得ており、利用可能なアプリ内広告フォーマットの中で最も効果的なフォーマットに選ばれています。
ネイティブ広告: ネイティブ広告は、アプリのユーザーエクスペリエンスを低下させずに広告主から収益を生み出す方法です。アプリの外観と使い心地を再現するように設計されたアプローチで、ユーザーに広告を配信しながらも満足度の高いユーザーエクスペリエンスを提供します。プログラマティックに販売されているモバイル用のネイティブ広告は、ネイティブ広告費用全額の84%を占めており、その総額は合計180億ドル以上に達しています。ネイティブ広告はアプリの設計と機能にマッチする必要があるため、今後はよりクリエイティブな手法が生まれる可能性があります。
PubMaticのAPAC担当アプリ内スペシャリストであるラシャーン・ファン氏は、5Gの登場により、モバイルのアプリ内広告が近いうち大幅に増加すると見込んでいます。ファン氏は、「5Gの携帯電話はモバイル上のユーザーエクスペリエンス、特にモバイルゲームや動画ストリーミングの分野の高解像度テクノロジーや対話型テクノロジーのパフォーマンスを大幅に高めると予測される」と述べています。広告主にとってこの進化するテクノロジーが、広告の品質を高めるためのさまざまな機会をもたらします。
Adjustによるユーザーレベルの広告収益計測
アプリ内広告は重要な領域であり、Adjustでも広告収益を計測する優れた機能でマーケターをサポートしています。ユーザーレベルの広告収益を計測するこの機能は、アプリ内広告の収益化を正確に計測し、ユーザーが広告にどう反応しているかを評価するデータをもたらします。これによって、収益を構成するユーザー数や、最も有益なアプリユーザーが流入するネットワークの計測が可能になります。Adjustのユーザーレベルの広告収益計測は、任意のセグメンテーションレベルで広告収益をきめ細かく分析し、データ主導型のインサイトによってパフォーマンスを最適化し、ターゲットへの働きかけを強化するための手段を提供します。
YouTubeはこのビデオの視聴者に対し、 の利用許可を求めています。.
また、Adjustを使用してユーザーレベルの広告収益を計測するもうひとつのメリットは、顧客生涯価値(LTV)をより正確に判断できることです。これは、ユーザー獲得コストやアプリ内収益、広告からコンバージョンに至ったユーザーがもたらした収益額をAdjustが計測できるためです。これらのデータポイントを得ることで、LTVをより高い精度で計算できるようになります。Adjustのユーザーレベルの広告収益に関する詳細は、こちらからご確認ください。
2. フリーミアム・サブスクリプション収益化モデル
多くのアプリはフリーミアムサービスを提供しており、ユーザーはアプリを無料でダウンロードし、広告付きで機能を楽しむことができます。試したことのないアプリをユーザーが購入する可能性は低いため、フリーミアムサービスを実装して、ユーザーがサブスクリプションを購入する前にアプリを試せるようにする選択肢が人気です。フリーミアムサービスを提供することで、ユーザーに製品の価値を示し、購入価値があると納得させることができます。アプリが無料だとユーザーを獲得しやすいため、フリーミアムモデルは引き続き高い効果をもたらす手法でしょう。さらに、サブスクリプションのプレミアムサービスに登録しないユーザーでも、アプリ内広告によって収益化につなげることが可能です。
ユーザーは、サブスクリプション収益化モデルを通じて広告(およびその他の特典)を回避することができます。Sensor Towerのレポートによると、米国での上位100のサブスクリプションアプリの収益は2019年に21%増加しました。同社の別のレポートからは、アプリ内購入、プレミアムアプリ、サブスクリプションは、2021年第3四半期の292億ドルから前年比15.1%増の336億ドルとなったことが分かります。たとえば、Spotifyの無料サービスは曲の途中に広告が配信されますが、プレミアムサービスでは広告がない代わりに月額料金が発生します。プレミアムサービスを1ヶ月試せる無料トライアルを通して、ユーザーは上位のサービスを体験することもできます。
インフルエンサーマーケティングの活用
インフルエンサーマーケティングを使用してサブスクリプションサービスを宣伝するという手法もあります。インフルエンサーマーケティングは、人気のあるソーシャルメディアの著名人やブランドと連携する活動です。多くの場合、アカウントで製品を紹介することに対して代金を支払います。インフルエンサーマーケティングは、スマートなブランドマーケティング手法です。10に1つのブランドが、マーケティング予算の40%以上をインフルエンサーマーケティングに投入すると回答しています。たとえば、ヘルス&フィットネスアプリは、さまざまなフィットネスインフルエンサーと連携してプレミアムサービスを宣伝しています。さらに、そのインフルエンサーのファンに割引コードを提供することで、インフルエンサーのサポートだけでなく、サービス購入を促すことも可能です。インフルエンサーマーケティングを実施した結果として、コンバージョンに至ったユーザーをこれで特定することができます。また、TwitchなどのゲームプラットフォームでDAUが現在増加していることから、インフルエンサーマーケティングはマーケティングに不可欠な要素です。
また、ソーシャル メディア プラットフォームをアプリと統合することも重要です。これにより、ユーザーはハイスコアなどのゲーム関連のコンテキストをソーシャル メディア アカウントで共有しやすくなります。アプリを無料で宣伝し、ゲームのコミュニティをさらに構築するための効果的な方法です。トレンドを分析し、競合相手に一歩先んじることができるようにもなるでしょう。
3. アプリ内購入
アプリ内購入は、多くのモバイルアプリにとって必要不可欠です。Google Play ストアの全アプリの95%は無料で利用でき、収益を生み出すためにアプリ内購入などの収益化手法を使用しています。世界的に見ると、ユーザーがアプリ内購入に費やす金額は3,800億ドルであり、アプリ内購入が収益を増やすための優れた方法だということが分かります。
モバイルゲームでは、アプリ内購入は消耗品と非消耗品に分けられます。消耗品はゲーム内通貨などの一時的なもので、非消耗品は一度だけ購入する必要があるものを指します。非消耗品のアプリ内購入としては、レベルやキャラクターのスキンのロック解除などがあります。
アプリ内購入はモバイルゲームに限ったものではありません。ソーシャルメディアアプリのRedditは、Reddit Coinsというアプリ内通貨を開発し成果を挙げています。同社の公式Webサイトでは、Reddit Coinsは「他者の模範となる投稿またはコメントに付与するために使用できる仮想商品」として記載されています。またRedditは、ブランドロイヤリティを活用してユーザーのアプリ内購入を促しており、Reddit Coinsは「お気に入りの投稿者を支持することでRedditの継続的な改善を促す」と述べています。
収益化予測:近い将来に予想されること
アプリ収益化の現在の状況をたどるだけでなく、今後市場に影響を及ぼす可能性があるトレンドを見据えることも不可欠です。以下では、マーケター必見のアプリトレンドと収益化の手法を紹介します。
複数の収益ソースがますます重要に
アプリの収益化には、複数の収益ソースを構築しておくことが賢明です。これによりセーフティネットが確保できるだけでなく、ユーザーの好みに合わせてアプリの利用方法を決定できるようになります。多くのアプリが直面している問題として、収益に貢献するオーディエンスがごく一部に限られているということがあります。アプリテスト会社のSwrveが2017年に発表したレポートによると、アプリで課金するのはゲーマーの2.2%であり、全収益の46%はそのグループの10%を占める高額課金ゲーマーによるものでした。その後数年の間、その数字はさほど変わっていません。収益化モデルを多角化することで、高額課金する少数のユーザーへの依存率が低下します。さらに、アプリ収益が増加し、より堅牢で総合的な収益化戦略の構築が可能になります。
アプリ内入札により激化する広告インベントリー
アプリ内入札は、パブリッシャーの広告インベントリーをオークションするための高度な手法です。基本原則では、広告主がそのインベントリーに対して互いに同時入札します。2019年〜2020年の12ヶ月間で、Facebook Audience Networkによる入札を使用するアプリ数は7倍に増加しました。DigiDayによると、アプリ内入札により、アクティブユーザーあたりの1日の平均収益(ARPDAU)は13~27%増加しています。Game Insightなどのモバイルゲーム開発企業では、より多くのインベントリーをアプリ入札経由でオークションするようになっています。同社は現在、インベントリーの95%をアプリ入札で運営しています。これがますます一般的になるにつれ、アプリ入札はあらゆるデマンドソースにインプレッションを勝ち取る機会を提供し、パブリッシャーはインベントリーに対して、最良の価格を獲得できるようになるでしょう。
ARの台頭
Appleの2020年第1四半期の業績発表で、Apple CEOのティム・クック氏は次のように述べました。「企業と消費者の両方から必須であると見なされる新技術はめったにありません。それが、AR(拡張現実)が人々の暮らしに広く普及すると私が考える理由です」。ARがモバイルアプリ業界でますます普及する中、マーケターはこのテクノロジーを利用するアプリの収益化方法を模索しています。たとえば、NianticのポケモンGOは、ARアプリがアプリ内購入によっていかに収益化可能かを示す良い例でしょう。アプリのゲーム内ショップで、ユーザーは「ポケコイン」を使用してゲームアイテムを購入できます。また、ゲームをプレイしてポケコインを獲得することも可能です。
ARによる収益化のもう1つの成功例は、IKEA Placeです。IKEA PlaceはIKEAが提供する無料アプリで、ユーザーはIKEA製品を自宅に置いたらどうなるかをシミュレーションできます。これにより、商品を自宅に設置した場合のイメージがユーザーに強く印象付けられ、店舗で商品を見る前にユーザーの購入欲が高まります。IKEA Placeは、Appleの拡張現実フレームワークであるARKitを使用して構築されています。リリースされると同時に、同フレームワークを使用して構築された無料アプリの中で人気第2位になりました。業界のトレンドや将来の予測に関する詳しいインサイトについては、最新のモバイルアプリトレンドレポートをご覧ください。グローストレンドや市場ごとのパフォーマンスベンチマークなど、重要インサイトをお届けします。
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